オリジナル小説 『Re:ターン・プリティスター』目次&リンクです。
2031-04-24

『Re:ターン・プリティスター』は作家の星花夏希と絵師のみにー共作のオリジナル魔法少女作品です。
🏆たいあっぷオープニングコンテストで入賞して商業作品になりました。
kindle版第1巻 小説6万文字。挿絵52枚。無料!
kindle版第2巻 小説6万文字。挿絵39枚。330円
kindle版第3巻 小説6万文字。挿絵33枚。330円
kindle版第4巻 小説7万文字。挿絵31枚。330円
kindle版第5巻 小説5万文字。挿絵21枚。330円
kindle版第6巻 小説6万文字。挿絵27枚。330円
kindle版第7巻 小説6万文字。挿絵38枚。330円
kindle版第8巻 小説5万文字。挿絵22枚。330円
たいあっぷ書籍 第1巻は無料。第2巻以降220円
Twitter公式アカウント
キャラクターアカウント(天羽結衣)(若葉未幸)
ファンアートコーナー
【無料Web版・目次】
《第一部》
1話 生きる意味を探して
2話 天羽結衣にできること
外伝 若葉未幸の多忙な一日
3話 光と闇の覚悟
4話 特訓開始! 運命と戦うために
5話 結衣の願いとジェミニの誓い
6話 激闘! ジェミニ対パンドーラ
7話 終結! そして帰るべき場所へ
《過去編》幼少編(本編より4年前)
結衣と蝶舞が入れ替わる日(前編)
結衣と蝶舞が入れ替わる日(後編)
《過去編》先代編(本編より3年前)
若葉未幸と無敵のヒーロー(前編)
若葉未幸と無敵のヒーロー(中編)
若葉未幸と無敵のヒーロー(後編)
《第二部》
8話 紡がれる絆、秘められた言葉
9話 明かせない過去、失われた記憶
10話 取り戻したいもの、守りたいもの
11話 シメールの策略! 憎悪の炎の中で
12話 不協和音! 闇に吠える悪魔たち
13話 決戦前夜! 想いを力に変えて
14話 飛来せしモノ! 絶望に覆い尽くされた空
15話 竜虎相搏! 譲れない願い
16話 スタージェミニの真の力! 愛と希望の灯火
《過去編》先々代編(本編より4年前)
時を超えて蘇る伝説の戦士!(前編)
時を超えて蘇る伝説の戦士!(後編)
絆の力と忍び寄る影
繋いでいた手は、今は遠くありて
ただ一つの願いが叶うなら
《第三部》
17話 オルトス対パンドーラ! 蒼き獣の咆哮
18話 切ない想いと譲れない願い
19話 結衣と未幸の新たなる生活
20話 激突! ジェミニ対アリーズ
21話 背水の陣! ダークハウル最後の企み
22話 聳え立つ魔法円! シメールからの挑戦状
23話 炎のスタジアム! 守護竜ラドゥとの激闘
24話 総力戦! 暴走する最強の悪魔ラードーン
25話 発現! アレキサンドライトの真なる力
26話 悲願成就! 紅き極大魔法円
《第四部》
27話 脅威! 悪魔の偽王国の七十二柱(前編)
28話 脅威! 悪魔の偽王国の七十二柱(後編)
29話 天羽家襲撃! 迫り来る悪魔の包囲網
30話 絶体絶命! 無敵のヒーローと少女の祈り
31話 歩み寄る光と影
32話 悪夢のカウントダウン! 東京都壊滅
33話 遊園地跡の大決戦! 悪魔の偽王国壊滅
34話 ダーク対ジェミニ! 光と闇の剣戟の果てに
《第五部》(最終章)
35話 消えたスタージェミニ
36話 迫りくる決断の時
37話 結衣と蝶舞の選択
38話 天羽結衣が残したもの
39話 二柱の神と終焉の軍勢
40話 スターアリーズの使命と若葉未幸の決断
41話 最終決戦! 奇跡のスーパー・スタージェミニ
《重大発表》

イラスト×小説コラボ型投稿サイト「たいあっぷ」のオープニングコンテストにて 『Re:ターン・プリティスター』が受賞いたしました。
コンテストで無料公開した第1巻に続き、第2巻が2021年12月6日に電子書籍化されて販売されました。これにより 『Re:ターン・プリティスター』は商業作品になりました!(当ブログでの無料公開は続けます。たいあっぷ運営の許可を取ってあります)
ですが書籍版は新規書下ろしの掌編6本や、表紙や口絵や挿絵を含む40枚近い新規イラストが掲載されている完全版です。1冊220円と、とても買いやすい価格になっております。もしよろしければ、ご購入よろしくお願いします。
イラスト×小説コラボ型投稿サイト「たいあっぷ」
「たいあっぷ」オープニングコンテスト結果発表
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【星よりも、花よりも】SSタイトル一覧(全208作品)目次です!
2029-01-01

イラスト提供【4EVER-FRESH!】ルキ様
(初めて当ブログのSSを読まれる方へ)
SSタイトル一覧は、カテゴリー順に配置されています。初期の稚拙な作品もあちこちに混じっています。できましたら、最初に『翼をもがれた鳥』を2~3話読まれることをお勧めします。代表作ですので、それで合うかどうかを判断していただけると幸いです。大半がTVアニメ『フレッシュプリキュア!』のSS(二次創作小説)です。
※最新作2020年8月12日に完結しました。最初にこれか、『翼をもがれた鳥』を読むことをお勧めします。
飛べないもう一羽のウサギ継続140文字SS
(【TV本編後日談】全85ツイートのTwitter長編小説です)
帰ってきたせっちゃん
(【TV本編後日談】連載中。ある日のせっちゃんの日常を描いたシリーズです)
第1話 『帰ってきたせっちゃん――素直な気持ち――』
第2話 『帰ってきたせっちゃん――幸せを学ぶために――』
第3話 『帰ってきたせっちゃん――おうちで夕ご飯――』
第4話 『帰ってきたせっちゃん――黄色いちょうちょ――』
第5話 『帰ってきたせっちゃん――クローバーで遊園地――』
第6話 『帰ってきたせっちゃん――母の日のプレゼント――』
第7話 『帰ってきたせっちゃん――ラブとせつなの料理対決――』
第8話 『帰ってきたせっちゃん――雨の日のお出かけ――』
第9話 『帰ってきたせっちゃん――父の日のプレゼント――』
第10話『帰ってきたせっちゃん――蛍を探せ! ――』
第11話『帰ってきたせっちゃん――短冊に願いを込めて――』
第12話『帰ってきたせっちゃん――メジロの雛を守れ! ――』
第13話『帰ってきたせっちゃん――海水浴の思い出――』
第14話『帰ってきたせっちゃん――クローバーフェスティバル――』
第15話『帰ってきたせっちゃん――四つ葉中学文化祭(前編)――』
第16話『帰ってきたせっちゃん――四つ葉中学文化祭(中編)――――』
第17話『帰ってきたせっちゃん――四つ葉中学文化祭(後編)――』
第18話『帰ってきたせっちゃん――せつなが帰る日(前編)――』
第19話『帰ってきたせっちゃん――せつなが帰る日(中編)――』
第20話『帰ってきたせっちゃん――せつなが帰る日(後編)――』
第21話『帰ってきたせっちゃん――幸せの青い鳥――』
第22話『帰ってきたせっちゃん――四つ葉中学体育祭(前編)――』
第23話『帰ってきたせっちゃん――四つ葉中学体育祭(後編)――』
第24話『帰ってきたせっちゃん――空が荒れる日――』
第25話『帰ってきたせっちゃん――パジャマパーティー――』
第26話『帰ってきたせっちゃん――クリスマスの奇跡――』
第27話『帰ってきたせっちゃん――大晦日の約束――』
第28話『帰ってきたせっちゃん――初夢の夢占い――』
第29話『帰ってきたせっちゃん――天まで上がれ! (前編)――』
第30話『帰ってきたせっちゃん――天まで上がれ! (後編)――』
第31話『帰ってきたせっちゃん――ひな祭りの雛人形――』
翼をもがれた鳥
(【TV本編パッション誕生編】の改変SSです。全21話完結。異なる展開のパラレルワールドです)
第零話 『翼をもがれた鳥――ラブとせつなの大切なもの――』new!!
第1話 『翼をもがれた鳥――飛べない空を見上げて――』
第2話 『翼をもがれた鳥――飛べない鳥は大地を駆ける――』
第3話 『翼をもがれた鳥――夢のまた夢――』
第4話 『翼をもがれた鳥――そして飛べない現実を知る(前編)――』
第5話 『翼をもがれた鳥――そして飛べない現実を知る(後編)――』
第6話 『翼をもがれた鳥――禁断の果実――』
第7話 『翼をもがれた鳥――飛べない鳥は地に斃れ伏す――』
第8話 『翼をもがれた鳥――友の胸に抱かれて――』
第9話 『翼をもがれた鳥――ただ一度きりの飛翔――』
第10話『翼をもがれた鳥――よみがえる白き翼――』
第11話『翼をもがれた鳥――暗闇の中で――』
第12話『翼をもがれた鳥――帰るべき場所――』
第13話『翼をもがれた鳥――相反する想い――』
第14話『翼をもがれた鳥――重なり合う心――』
第15話『翼をもがれた鳥――三位一体――』
第16話『翼をもがれた鳥――四つ葉のクローバー――』
第17話『翼をもがれた鳥――幸せの素に導かれて――』
第18話『翼をもがれた鳥――夢と幸せの継承者――』
第19話『翼をもがれた鳥――ファイナルコンサート――』
第20話『翼をもがれた鳥――Wheel of Fortune/運命の輪――』
第21話『翼をもがれた鳥――最終話 幸せの赤い翼――』
幸せの赤い翼
(『翼をもがれた鳥』シリーズで、【映画 おもちゃの国は秘密がいっぱい!?】の改変SSです。完結)
第1話 『幸せの赤い翼――おもちゃの国は秘密がいっぱい!?(古き友の呼び声)――』
第2話 『幸せの赤い翼――おもちゃの国は秘密がいっぱい!?(国王さまとの邂逅)――』
第3話 『幸せの赤い翼――おもちゃの国は秘密がいっぱい!?(それぞれの戦い~前編)――』
第4話 『幸せの赤い翼――おもちゃの国は秘密がいっぱい!?(それぞれの戦い~後編)――』
第5話 『幸せの赤い翼――おもちゃの国は秘密がいっぱい!?(トイマジン急襲)――』
第6話 『幸せの赤い翼――おもちゃの国は秘密がいっぱい!?(それぞれの想い)――』
第7話 『幸せの赤い翼――おもちゃの国は秘密がいっぱい!?(決戦! 戦いの果てに)――』
第8話 『幸せの赤い翼――おもちゃの国は秘密がいっぱい!?(よみがえる白き翼)――』
第9話 『幸せの赤い翼――おもちゃの国は秘密がいっぱい!?(おもちゃから愛を込めて)――』
かれんだーぼいすでコネタ!
(カレンダーボイスから繋いだコネタです。全365本完結)
かれんだーぼいすでコネタ! 1月分
かれんだーぼいすでコネタ! 2月分
かれんだーぼいすでコネタ! 3月分
かれんだーぼいすでコネタ! 4月分
かれんだーぼいすでコネタ! 5月分
かれんだーぼいすでコネタ! 6月分
かれんだーぼいすでコネタ! 7月分
かれんだーぼいすでコネタ! 8月分
かれんだーぼいすでコネタ! 9月分
かれんだーぼいすでコネタ! 10月分
かれんだーぼいすでコネタ! 11月分
かれんだーぼいすでコネタ! 12月分
かれんだーぼいすでコネタ! Return
(『かれんだーぼいすでコネタ!』の世界観から生まれた番外編です)
かれんだーぼいすでコネタ! クリスマススペシャル
かれんだーぼいすでコネタ! 本音の羽!?
かれんだーぼいすでコネタ! 鏡よ、鏡よ、鏡さん
かれんだーぼいすでコネタ! 山吹家のお料理事情
かれんだーぼいすでコネタ! クローバーの初詣
かれんだーぼいすでコネタ! クローバーの2月
かれんだーぼいすでコネタ! 占い師、イースせつなの憂鬱
東せつな・カレンダーツイート2015
(https://twitter.com/4039781_es)より
東せつな・カレンダーツイート 1月分
東せつな・カレンダーツイート 2月分
東せつな・カレンダーツイート 3月分
東せつな・カレンダーツイート 4月分
東せつな・カレンダーツイート 5月分
東せつな・カレンダーツイート 6月分
東せつな・カレンダーツイート 7月分
東せつな・カレンダーツイート 8月分
東せつな・カレンダーツイート 9月分
東せつな・カレンダーツイート10月分
東せつな・カレンダーツイート11月分
東せつな・カレンダーツイート12月分new!!
リクエスト作品(2万アクセス感謝企画です)
コロ助MH様
『帰ってきたせっちゃん(パラレルストーリー)――ラブとせつな、新たなる旅立ち――』
たれまさ様
『幸せの赤い翼(パラレルストーリー)―― さようなら! タルトとシフォン!!(前編)――』
『幸せの赤い翼(パラレルストーリー)―― さようなら! タルトとシフォン!!(後編)――』
ねぎぼう様
『フレッシュプリキュア!(パラレルストーリー)――驚きの真実! メビウスの本当の姿!!(前編) 』
『フレッシュプリキュア!(パラレルストーリー)――驚きの真実! メビウスの本当の姿!!(後編) 』
waka_sawa様
『フレッシュプリキュア!(第4.5話)――駅前イベント広場を守れ!(前編)――』
『フレッシュプリキュア!(第4.5話)――駅前イベント広場を守れ!(後編)――』
酢こんぶ様
『翼をもがれた鳥』の続編にあたるパラレルストーリー。(『フレッシュプリキュア!』と『スイートプリキュア♪』のクロス作品)
第1話 『赤い翼の輪舞曲――ラビリンスからの誘い――』
第2話 『赤い翼の輪舞曲――新たなる戦い(前編)――』
第3話 『赤い翼の輪舞曲――新たなる戦い(後編)――』
第4話 『赤い翼の輪舞曲――ひとつながりの世界――』
第5話 『赤い翼の輪舞曲――異世界からの来訪者――』
第6話 『赤い翼の輪舞曲――ようこそ、加音町へ!――』
第7話 『赤い翼の輪舞曲――それぞれの夢を追って――』
第8話 『赤い翼の輪舞曲――急襲! メイジャーランド!!――』
第9話 『赤い翼の輪舞曲――The Day the World Ended――』
第10話『赤い翼の輪舞曲――天翔ける黒き翼(前編)――』
第11話『赤い翼の輪舞曲――天翔ける黒き翼(後編)――』
第12話『赤い翼の輪舞曲――決戦! 悲しみを刃に変えて!!――』
第13話『赤い翼の輪舞曲――天空より、飛来せしもの!!――』
第14話『赤い翼の輪舞曲――響け! 幸せのスキャット!!――』
第15話『赤い翼の輪舞曲――繋がる世界と結ぶ歌――』
第16話『赤い翼の輪舞曲――融合を超えろ! 心を繋ぐ組曲の調べ――』
第17話『赤い翼の輪舞曲――幸せの“セッション・アンサンブル”――』
第18話『赤い翼の輪舞曲――導け! 伝説にもない奇跡!!――』
第19話『赤い翼の輪舞曲――大逆転! グランドフィナーレ!!――』
第20話『赤い翼の輪舞曲――最終話 帰るべき場所――』
恵千果様
『フレッシュプリキュア!(サイドストーリー)~あなただから言えること~』
嶋様
『一緒なら、輝けるから(パラレルストーリー)――新たなる旅立ち――』
れいん様
『フレッシュプリキュア!(パラレルストーリー)――凍てつく炎の少女―― 』
一六様
『フレッシュプリキュア!(パラレルストーリー)――コードネームはカオルちゃん(前編)―― 』
『フレッシュプリキュア!(パラレルストーリー)――コードネームはカオルちゃん(後編)―― 』
◆w7CHx16PAo様
『帰ってきたせっちゃん(パラレルストーリー)――青い鳥が見る夢は――』
一架様
『翼をもがれた鳥』の続編にあたるパラレルストーリー。(サブタイトルは受難曲「Passion」より)
第1話 『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(ラビリンスからの招待状)――』
第2話 『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(せつなを取り戻せ)――』
第3話 『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(もう一人のイース)――』
第4話 『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(赤黒い闇の底で)――』
第5話 『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(世界が反転する日)――』
第6話 『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(明かされた真実)――』
第7話 『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(ドッペルゲンガーの想い)――』
第8話 『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(イース対プリキュア)――』
第9話 『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(せつなとイース・占い館の攻防)――』
第10話『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(最後に残された幸せ)――』
第11話『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(あらゆる不幸を乗り越えて)――』
第12話『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(探し求めていた答え)――』
第13話『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(集え! 愛が導く奇跡の力)――』
変身バトル
(変身して戦うバトルストーリーです)
『フレッシュプリキュア! パラレルストーリー(笑顔の少年と笑わない少女)』
『イース対キュアベリー~運命の邂逅』
『幸せの赤い鍵(前編)』
『幸せの赤い鍵(中編)』
『幸せの赤い鍵(後編)』
『決戦! メビウスの城(前編)』(TV本編49話の改変です)
『決戦! メビウスの城(後編)』(TV本編49話の改変です)
『祈里の船上パーティー(前編)』(TV本編41話の改変です)
『祈里の船上パーティー(中編)』(TV本編41話の改変です)
『祈里の船上パーティー(後編)』(TV本編41話の改変です)
クローバー
(4人が織り成すお話です)
『羽ばたけ! クローバー』
『せつなの決意。最終決戦へ!』(TV本編44話の改変です)
『それぞれの告白、そして旅立ち(前編)』(TV本編45話の改変です。重い話です、閲覧注意)
『それぞれの告白、そして旅立ち(後編)』(TV本編45話の改変です。重い話です、閲覧注意)
『クローバーの初詣』
『年の瀬のクローバー』
『集え! クローバー(前編)』
『集え! クローバー(後編)』
『集え! クローバー(後日談)響け! 幸せのビート』
『プリキュアの掟』(重い話です、閲覧注意)
『それぞれの道。それぞれの夢』
『白鳥のボート』
『紫陽花とクローバー』
『クリスマスに愛を込めて(前編)』
『クリスマスに愛を込めて(後編)』
『たいへん! せつなが消えちゃった!? ~子供の頃のクリスマス~(起の章)』
『たいへん! せつなが消えちゃった!? ~子供の頃のクリスマス~(承の章)』
『たいへん! せつなが消えちゃった!? ~子供の頃のクリスマス~(転の章)』
『たいへん! せつなが消えちゃった!? ~子供の頃のクリスマス~(結の章)』
ラブとせつな
(ラブとせつなを中心としたお話です)
『イース~迷宮の中で~』
『鬼は外♪ 福は内♪』
『一緒なら、輝けるから』
『ラビリンスのゴールデンウィーク』
『秋の夜長に』
せつなと美希と祈里
(せつなと美希、または祈里を中心としたお話です)
『占いに祈りを込めて』
『美希とせつなの素敵な日』
『祈里とせつなの動物クッキー』
準SS
(短編です。小ネタではなく、真面目なお話です。詩的な作品もあります)
『隣り合わせのパズルのピース』
『マイ・フレンド』
『幼馴染』
『あゆみ日記~もう一人の娘に愛を込めて』
『クローバーの晴れ着姿』
『笑顔で見送るって決めたから』
『さようなら、クローバー』
『せつなの帰還。そして旅立ち』
『いつか帰る日のために』
『星空を見上げて』
『春に舞う幸せの花』
『ある梅雨の日のクローバー』
『おやすみの前に』
『一日のはじまりの言葉』
『海の日のクローバー』
『祈里の部屋のサンタクロース』
コネタ
(主に会話だけですが、地の文を含むSS的なお話もあります)
『エイプリルフールに美希とせつなで』
『せつなの帰還』
『本日の教訓』
『コネタ 4品』
『メガハウス アルファオメガ フレッシュプリキュア イース』
『ちぇんじ・たると・びーすとあっぷ?』
フレッシュプリキュアで140文字SS①
フレッシュプリキュアで140文字SS②new!!
pixivで開催された【企画】(プリキュアS☆Sで競作しよう!)にて執筆した作品です。
『ふたりはプリキュア Splash Star――星空の仲間たち(前編)――』
『ふたりはプリキュア Splash Star――星空の仲間たち(後編)――』
ハピネスチャージプリキュア!
『ハピネスチャージプリキュア!――めぐみの悩み!? わたしなんて強くない!!――』
「ハピネスチャージプリキュア!」第6話の改変コネタ。『ゆうこの“料理は愛情”』
「ハピネスチャージプリキュア!」第7話の改変SS。『一人だけど、独りじゃない』
「ハピネスチャージプリキュア!」第9話の改変SS。『ひめとめぐみの空手修行』
「ハピネスチャージプリキュア!」第20話の改変コネタ。『知ってた!』
『ハピネスチャージプリキュア!(140文字SS)――プリキュアの読書会――』
『ハピネス注入! 冬のSS祭り2015~開幕~』(プリキュア!ガールズ掲示板競作の挨拶コネタ)new!!
『映画プリキュアオールスターズ NewStage3 永遠のともだち』より、140文字SSリレー。
『キュアエコー、プリキュア教科書に載る』
Spcial Thanks(頂き物など)
ルキ様
【星よりも、花よりも】一周年記念イラストを頂きました。
【星よりも、花よりも】二周年記念イラストを頂きました。
【星よりも、花よりも】三周年記念イラストを頂きました。
『帰ってきたせっちゃん――第1話 再会シーン イメージイラスト――』
『翼をもがれた鳥――完結記念 イメージイラスト――』
かれんだーぼいすでコネタ! 完結記念 四コマ漫画
れいん様
【星よりも、花よりも】4万アクセス記念イラストを頂きました。
『翼の種子のパッション――イメージイラスト――』
銀天馬★しろがねてんま★様
東せつな・カレンダーツイート2015 7月3日より イメージイラスト
ことぶき おと様
東せつな・カレンダーツイート2015 9月9日より イメージイラスト
東せつな・カレンダーツイート2015 10月6日より イメージイラスト
東せつな・カレンダーツイート2015 10月11日より イメージイラスト
れいん様&一六様
『幸せの赤い鍵・外伝~キーホルダーズ~』
匿名様、れいん様、一六様、一架様
『パラレルせつなのカレンダーツイート』
Minnie*fp様
『翼をもがれた鳥――壊れた幸せの素の欠片 実物写真イメージ――』
リクエストで描いてもらったキャラクターの一覧
『翼をもがれた鳥』 第10話「よみがえる白き翼」より、イメージイラスト “白き翼のイース”
『ハピネスチャージプリキュア!』より、“スーパーハピネスラブリー” “フォーエバーラブリー” “織原つむぎ”
『帰ってきたせっちゃん(四つ葉中学文化祭)』 “ロミオとジュリエット” イメージイラスト
『幸せの赤い翼――おもちゃの国は秘密がいっぱい!?』 より、ピーチとイースのイメージイラスト
『翼をもがれた鳥』シリーズ外伝『赤い翼の輪舞曲』より、イメージイラスト
『幸せの赤いカギ』より、イメージイラスト “少女アカルン”
【星よりも、花よりも】6周年記念イラストを頂きました。
『たいへん! せつなが消えちゃった!? ~子供の頃のクリスマス~』イメージイラスト
『赤い翼の輪舞曲』第7話「それぞれの夢を追って」の挿絵をいただきました。
【星よりも、花よりも】7周年記念イラストをいただきました。
【星よりも、花よりも】8周年記念イラストをいただきました。
【星よりも、花よりも】9周年記念イラストをいただきました。
【星よりも、花よりも】10周年記念イラストをいただきました。
水蘭様
『帰ってきたせっちゃん』 第1話「素直な気持ち」より、イメージイラスト
その他(作品外)
“あみぐるみ”シフォン作ってみました。
飛べないもう一羽のウサギ継続140文字SS
(【TV本編後日談】全85ツイートのTwitter長編小説です)
帰ってきたせっちゃん
(【TV本編後日談】連載中。ある日のせっちゃんの日常を描いたシリーズです)
第1話 『帰ってきたせっちゃん――素直な気持ち――』
第2話 『帰ってきたせっちゃん――幸せを学ぶために――』
第3話 『帰ってきたせっちゃん――おうちで夕ご飯――』
第4話 『帰ってきたせっちゃん――黄色いちょうちょ――』
第5話 『帰ってきたせっちゃん――クローバーで遊園地――』
第6話 『帰ってきたせっちゃん――母の日のプレゼント――』
第7話 『帰ってきたせっちゃん――ラブとせつなの料理対決――』
第8話 『帰ってきたせっちゃん――雨の日のお出かけ――』
第9話 『帰ってきたせっちゃん――父の日のプレゼント――』
第10話『帰ってきたせっちゃん――蛍を探せ! ――』
第11話『帰ってきたせっちゃん――短冊に願いを込めて――』
第12話『帰ってきたせっちゃん――メジロの雛を守れ! ――』
第13話『帰ってきたせっちゃん――海水浴の思い出――』
第14話『帰ってきたせっちゃん――クローバーフェスティバル――』
第15話『帰ってきたせっちゃん――四つ葉中学文化祭(前編)――』
第16話『帰ってきたせっちゃん――四つ葉中学文化祭(中編)――――』
第17話『帰ってきたせっちゃん――四つ葉中学文化祭(後編)――』
第18話『帰ってきたせっちゃん――せつなが帰る日(前編)――』
第19話『帰ってきたせっちゃん――せつなが帰る日(中編)――』
第20話『帰ってきたせっちゃん――せつなが帰る日(後編)――』
第21話『帰ってきたせっちゃん――幸せの青い鳥――』
第22話『帰ってきたせっちゃん――四つ葉中学体育祭(前編)――』
第23話『帰ってきたせっちゃん――四つ葉中学体育祭(後編)――』
第24話『帰ってきたせっちゃん――空が荒れる日――』
第25話『帰ってきたせっちゃん――パジャマパーティー――』
第26話『帰ってきたせっちゃん――クリスマスの奇跡――』
第27話『帰ってきたせっちゃん――大晦日の約束――』
第28話『帰ってきたせっちゃん――初夢の夢占い――』
第29話『帰ってきたせっちゃん――天まで上がれ! (前編)――』
第30話『帰ってきたせっちゃん――天まで上がれ! (後編)――』
第31話『帰ってきたせっちゃん――ひな祭りの雛人形――』
翼をもがれた鳥
(【TV本編パッション誕生編】の改変SSです。全21話完結。異なる展開のパラレルワールドです)
第零話 『翼をもがれた鳥――ラブとせつなの大切なもの――』new!!
第1話 『翼をもがれた鳥――飛べない空を見上げて――』
第2話 『翼をもがれた鳥――飛べない鳥は大地を駆ける――』
第3話 『翼をもがれた鳥――夢のまた夢――』
第4話 『翼をもがれた鳥――そして飛べない現実を知る(前編)――』
第5話 『翼をもがれた鳥――そして飛べない現実を知る(後編)――』
第6話 『翼をもがれた鳥――禁断の果実――』
第7話 『翼をもがれた鳥――飛べない鳥は地に斃れ伏す――』
第8話 『翼をもがれた鳥――友の胸に抱かれて――』
第9話 『翼をもがれた鳥――ただ一度きりの飛翔――』
第10話『翼をもがれた鳥――よみがえる白き翼――』
第11話『翼をもがれた鳥――暗闇の中で――』
第12話『翼をもがれた鳥――帰るべき場所――』
第13話『翼をもがれた鳥――相反する想い――』
第14話『翼をもがれた鳥――重なり合う心――』
第15話『翼をもがれた鳥――三位一体――』
第16話『翼をもがれた鳥――四つ葉のクローバー――』
第17話『翼をもがれた鳥――幸せの素に導かれて――』
第18話『翼をもがれた鳥――夢と幸せの継承者――』
第19話『翼をもがれた鳥――ファイナルコンサート――』
第20話『翼をもがれた鳥――Wheel of Fortune/運命の輪――』
第21話『翼をもがれた鳥――最終話 幸せの赤い翼――』
幸せの赤い翼
(『翼をもがれた鳥』シリーズで、【映画 おもちゃの国は秘密がいっぱい!?】の改変SSです。完結)
第1話 『幸せの赤い翼――おもちゃの国は秘密がいっぱい!?(古き友の呼び声)――』
第2話 『幸せの赤い翼――おもちゃの国は秘密がいっぱい!?(国王さまとの邂逅)――』
第3話 『幸せの赤い翼――おもちゃの国は秘密がいっぱい!?(それぞれの戦い~前編)――』
第4話 『幸せの赤い翼――おもちゃの国は秘密がいっぱい!?(それぞれの戦い~後編)――』
第5話 『幸せの赤い翼――おもちゃの国は秘密がいっぱい!?(トイマジン急襲)――』
第6話 『幸せの赤い翼――おもちゃの国は秘密がいっぱい!?(それぞれの想い)――』
第7話 『幸せの赤い翼――おもちゃの国は秘密がいっぱい!?(決戦! 戦いの果てに)――』
第8話 『幸せの赤い翼――おもちゃの国は秘密がいっぱい!?(よみがえる白き翼)――』
第9話 『幸せの赤い翼――おもちゃの国は秘密がいっぱい!?(おもちゃから愛を込めて)――』
かれんだーぼいすでコネタ!
(カレンダーボイスから繋いだコネタです。全365本完結)
かれんだーぼいすでコネタ! 1月分
かれんだーぼいすでコネタ! 2月分
かれんだーぼいすでコネタ! 3月分
かれんだーぼいすでコネタ! 4月分
かれんだーぼいすでコネタ! 5月分
かれんだーぼいすでコネタ! 6月分
かれんだーぼいすでコネタ! 7月分
かれんだーぼいすでコネタ! 8月分
かれんだーぼいすでコネタ! 9月分
かれんだーぼいすでコネタ! 10月分
かれんだーぼいすでコネタ! 11月分
かれんだーぼいすでコネタ! 12月分
かれんだーぼいすでコネタ! Return
(『かれんだーぼいすでコネタ!』の世界観から生まれた番外編です)
かれんだーぼいすでコネタ! クリスマススペシャル
かれんだーぼいすでコネタ! 本音の羽!?
かれんだーぼいすでコネタ! 鏡よ、鏡よ、鏡さん
かれんだーぼいすでコネタ! 山吹家のお料理事情
かれんだーぼいすでコネタ! クローバーの初詣
かれんだーぼいすでコネタ! クローバーの2月
かれんだーぼいすでコネタ! 占い師、イースせつなの憂鬱
東せつな・カレンダーツイート2015
(https://twitter.com/4039781_es)より
東せつな・カレンダーツイート 1月分
東せつな・カレンダーツイート 2月分
東せつな・カレンダーツイート 3月分
東せつな・カレンダーツイート 4月分
東せつな・カレンダーツイート 5月分
東せつな・カレンダーツイート 6月分
東せつな・カレンダーツイート 7月分
東せつな・カレンダーツイート 8月分
東せつな・カレンダーツイート 9月分
東せつな・カレンダーツイート10月分
東せつな・カレンダーツイート11月分
東せつな・カレンダーツイート12月分new!!
リクエスト作品(2万アクセス感謝企画です)
コロ助MH様
『帰ってきたせっちゃん(パラレルストーリー)――ラブとせつな、新たなる旅立ち――』
たれまさ様
『幸せの赤い翼(パラレルストーリー)―― さようなら! タルトとシフォン!!(前編)――』
『幸せの赤い翼(パラレルストーリー)―― さようなら! タルトとシフォン!!(後編)――』
ねぎぼう様
『フレッシュプリキュア!(パラレルストーリー)――驚きの真実! メビウスの本当の姿!!(前編) 』
『フレッシュプリキュア!(パラレルストーリー)――驚きの真実! メビウスの本当の姿!!(後編) 』
waka_sawa様
『フレッシュプリキュア!(第4.5話)――駅前イベント広場を守れ!(前編)――』
『フレッシュプリキュア!(第4.5話)――駅前イベント広場を守れ!(後編)――』
酢こんぶ様
『翼をもがれた鳥』の続編にあたるパラレルストーリー。(『フレッシュプリキュア!』と『スイートプリキュア♪』のクロス作品)
第1話 『赤い翼の輪舞曲――ラビリンスからの誘い――』
第2話 『赤い翼の輪舞曲――新たなる戦い(前編)――』
第3話 『赤い翼の輪舞曲――新たなる戦い(後編)――』
第4話 『赤い翼の輪舞曲――ひとつながりの世界――』
第5話 『赤い翼の輪舞曲――異世界からの来訪者――』
第6話 『赤い翼の輪舞曲――ようこそ、加音町へ!――』
第7話 『赤い翼の輪舞曲――それぞれの夢を追って――』
第8話 『赤い翼の輪舞曲――急襲! メイジャーランド!!――』
第9話 『赤い翼の輪舞曲――The Day the World Ended――』
第10話『赤い翼の輪舞曲――天翔ける黒き翼(前編)――』
第11話『赤い翼の輪舞曲――天翔ける黒き翼(後編)――』
第12話『赤い翼の輪舞曲――決戦! 悲しみを刃に変えて!!――』
第13話『赤い翼の輪舞曲――天空より、飛来せしもの!!――』
第14話『赤い翼の輪舞曲――響け! 幸せのスキャット!!――』
第15話『赤い翼の輪舞曲――繋がる世界と結ぶ歌――』
第16話『赤い翼の輪舞曲――融合を超えろ! 心を繋ぐ組曲の調べ――』
第17話『赤い翼の輪舞曲――幸せの“セッション・アンサンブル”――』
第18話『赤い翼の輪舞曲――導け! 伝説にもない奇跡!!――』
第19話『赤い翼の輪舞曲――大逆転! グランドフィナーレ!!――』
第20話『赤い翼の輪舞曲――最終話 帰るべき場所――』
恵千果様
『フレッシュプリキュア!(サイドストーリー)~あなただから言えること~』
嶋様
『一緒なら、輝けるから(パラレルストーリー)――新たなる旅立ち――』
れいん様
『フレッシュプリキュア!(パラレルストーリー)――凍てつく炎の少女―― 』
一六様
『フレッシュプリキュア!(パラレルストーリー)――コードネームはカオルちゃん(前編)―― 』
『フレッシュプリキュア!(パラレルストーリー)――コードネームはカオルちゃん(後編)―― 』
◆w7CHx16PAo様
『帰ってきたせっちゃん(パラレルストーリー)――青い鳥が見る夢は――』
一架様
『翼をもがれた鳥』の続編にあたるパラレルストーリー。(サブタイトルは受難曲「Passion」より)
第1話 『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(ラビリンスからの招待状)――』
第2話 『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(せつなを取り戻せ)――』
第3話 『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(もう一人のイース)――』
第4話 『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(赤黒い闇の底で)――』
第5話 『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(世界が反転する日)――』
第6話 『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(明かされた真実)――』
第7話 『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(ドッペルゲンガーの想い)――』
第8話 『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(イース対プリキュア)――』
第9話 『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(せつなとイース・占い館の攻防)――』
第10話『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(最後に残された幸せ)――』
第11話『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(あらゆる不幸を乗り越えて)――』
第12話『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(探し求めていた答え)――』
第13話『幸せの赤い翼――翼の種子のパッション(集え! 愛が導く奇跡の力)――』
変身バトル
(変身して戦うバトルストーリーです)
『フレッシュプリキュア! パラレルストーリー(笑顔の少年と笑わない少女)』
『イース対キュアベリー~運命の邂逅』
『幸せの赤い鍵(前編)』
『幸せの赤い鍵(中編)』
『幸せの赤い鍵(後編)』
『決戦! メビウスの城(前編)』(TV本編49話の改変です)
『決戦! メビウスの城(後編)』(TV本編49話の改変です)
『祈里の船上パーティー(前編)』(TV本編41話の改変です)
『祈里の船上パーティー(中編)』(TV本編41話の改変です)
『祈里の船上パーティー(後編)』(TV本編41話の改変です)
クローバー
(4人が織り成すお話です)
『羽ばたけ! クローバー』
『せつなの決意。最終決戦へ!』(TV本編44話の改変です)
『それぞれの告白、そして旅立ち(前編)』(TV本編45話の改変です。重い話です、閲覧注意)
『それぞれの告白、そして旅立ち(後編)』(TV本編45話の改変です。重い話です、閲覧注意)
『クローバーの初詣』
『年の瀬のクローバー』
『集え! クローバー(前編)』
『集え! クローバー(後編)』
『集え! クローバー(後日談)響け! 幸せのビート』
『プリキュアの掟』(重い話です、閲覧注意)
『それぞれの道。それぞれの夢』
『白鳥のボート』
『紫陽花とクローバー』
『クリスマスに愛を込めて(前編)』
『クリスマスに愛を込めて(後編)』
『たいへん! せつなが消えちゃった!? ~子供の頃のクリスマス~(起の章)』
『たいへん! せつなが消えちゃった!? ~子供の頃のクリスマス~(承の章)』
『たいへん! せつなが消えちゃった!? ~子供の頃のクリスマス~(転の章)』
『たいへん! せつなが消えちゃった!? ~子供の頃のクリスマス~(結の章)』
ラブとせつな
(ラブとせつなを中心としたお話です)
『イース~迷宮の中で~』
『鬼は外♪ 福は内♪』
『一緒なら、輝けるから』
『ラビリンスのゴールデンウィーク』
『秋の夜長に』
せつなと美希と祈里
(せつなと美希、または祈里を中心としたお話です)
『占いに祈りを込めて』
『美希とせつなの素敵な日』
『祈里とせつなの動物クッキー』
準SS
(短編です。小ネタではなく、真面目なお話です。詩的な作品もあります)
『隣り合わせのパズルのピース』
『マイ・フレンド』
『幼馴染』
『あゆみ日記~もう一人の娘に愛を込めて』
『クローバーの晴れ着姿』
『笑顔で見送るって決めたから』
『さようなら、クローバー』
『せつなの帰還。そして旅立ち』
『いつか帰る日のために』
『星空を見上げて』
『春に舞う幸せの花』
『ある梅雨の日のクローバー』
『おやすみの前に』
『一日のはじまりの言葉』
『海の日のクローバー』
『祈里の部屋のサンタクロース』
コネタ
(主に会話だけですが、地の文を含むSS的なお話もあります)
『エイプリルフールに美希とせつなで』
『せつなの帰還』
『本日の教訓』
『コネタ 4品』
『メガハウス アルファオメガ フレッシュプリキュア イース』
『ちぇんじ・たると・びーすとあっぷ?』
フレッシュプリキュアで140文字SS①
フレッシュプリキュアで140文字SS②new!!
pixivで開催された【企画】(プリキュアS☆Sで競作しよう!)にて執筆した作品です。
『ふたりはプリキュア Splash Star――星空の仲間たち(前編)――』
『ふたりはプリキュア Splash Star――星空の仲間たち(後編)――』
ハピネスチャージプリキュア!
『ハピネスチャージプリキュア!――めぐみの悩み!? わたしなんて強くない!!――』
「ハピネスチャージプリキュア!」第6話の改変コネタ。『ゆうこの“料理は愛情”』
「ハピネスチャージプリキュア!」第7話の改変SS。『一人だけど、独りじゃない』
「ハピネスチャージプリキュア!」第9話の改変SS。『ひめとめぐみの空手修行』
「ハピネスチャージプリキュア!」第20話の改変コネタ。『知ってた!』
『ハピネスチャージプリキュア!(140文字SS)――プリキュアの読書会――』
『ハピネス注入! 冬のSS祭り2015~開幕~』(プリキュア!ガールズ掲示板競作の挨拶コネタ)new!!
『映画プリキュアオールスターズ NewStage3 永遠のともだち』より、140文字SSリレー。
『キュアエコー、プリキュア教科書に載る』
Spcial Thanks(頂き物など)
ルキ様
【星よりも、花よりも】一周年記念イラストを頂きました。
【星よりも、花よりも】二周年記念イラストを頂きました。
【星よりも、花よりも】三周年記念イラストを頂きました。
『帰ってきたせっちゃん――第1話 再会シーン イメージイラスト――』
『翼をもがれた鳥――完結記念 イメージイラスト――』
かれんだーぼいすでコネタ! 完結記念 四コマ漫画
れいん様
【星よりも、花よりも】4万アクセス記念イラストを頂きました。
『翼の種子のパッション――イメージイラスト――』
銀天馬★しろがねてんま★様
東せつな・カレンダーツイート2015 7月3日より イメージイラスト
ことぶき おと様
東せつな・カレンダーツイート2015 9月9日より イメージイラスト
東せつな・カレンダーツイート2015 10月6日より イメージイラスト
東せつな・カレンダーツイート2015 10月11日より イメージイラスト
れいん様&一六様
『幸せの赤い鍵・外伝~キーホルダーズ~』
匿名様、れいん様、一六様、一架様
『パラレルせつなのカレンダーツイート』
Minnie*fp様
『翼をもがれた鳥――壊れた幸せの素の欠片 実物写真イメージ――』
リクエストで描いてもらったキャラクターの一覧
『翼をもがれた鳥』 第10話「よみがえる白き翼」より、イメージイラスト “白き翼のイース”
『ハピネスチャージプリキュア!』より、“スーパーハピネスラブリー” “フォーエバーラブリー” “織原つむぎ”
『帰ってきたせっちゃん(四つ葉中学文化祭)』 “ロミオとジュリエット” イメージイラスト
『幸せの赤い翼――おもちゃの国は秘密がいっぱい!?』 より、ピーチとイースのイメージイラスト
『翼をもがれた鳥』シリーズ外伝『赤い翼の輪舞曲』より、イメージイラスト
『幸せの赤いカギ』より、イメージイラスト “少女アカルン”
【星よりも、花よりも】6周年記念イラストを頂きました。
『たいへん! せつなが消えちゃった!? ~子供の頃のクリスマス~』イメージイラスト
『赤い翼の輪舞曲』第7話「それぞれの夢を追って」の挿絵をいただきました。
【星よりも、花よりも】7周年記念イラストをいただきました。
【星よりも、花よりも】8周年記念イラストをいただきました。
【星よりも、花よりも】9周年記念イラストをいただきました。
【星よりも、花よりも】10周年記念イラストをいただきました。
水蘭様
『帰ってきたせっちゃん』 第1話「素直な気持ち」より、イメージイラスト
その他(作品外)
“あみぐるみ”シフォン作ってみました。
『Re:ターン・プリティスター(第41話)――魔界の最終決戦! 奇跡のスーパー・スタージェミニ――』
2023-01-21

神獣化したフェニックスが、その巨大な炎の翼を力強く羽ばたかせる。大きく弧を描きながら加速して、魔神ダークに迫る。
アリーズはようやく落ち着いた様子で、自分の足で立ってジェミニと向き合った。
「生きていたんだね、結衣ちゃん。それに、スーパー・スタージェミニになったんだ!」
「これ、そんな名前なのね……」
ジェミニは目をパチクリさせて、あらためて自分の姿とアリーズの姿を見比べる。確かに衣装の変化がそっくりだった。
満面の笑みから一転、アリーズは表情を引き締めてジェミニに囁く。
「ジェミニ、ダークとの戦いには気をつけて。裏当てでわかったんだけど、あんな姿でも身体の作りは人間のままなの。下手に傷つけると雫ちゃんの命にかかわるかも」
「ええ、わかってる。ここに戻ってすぐに、シルからあらましは聞いたから」
二人が話している間にも、ダークは邪宝石を使って飛行速度を上げ、フェニックスの追撃を躱す。時折、魔力弾を撃って反撃してきたが、そんなものではフェニックスはビクともしない。
「おのれッ! 邪宝石開放――」
追い詰められたダークが、立て続けに邪宝石を消費する。
身体能力と飛行速度の向上に加えて、耐熱防御、オートバリア強化、魔法多重発動、魔力向上、詠唱中断阻止と、新たに五つの効果を付与していった。
「少し遊んでやったからといって調子に乗るなよ、小娘ども。本気になればお前たちを倒す手段などいくらでもあるのだ!」
邪宝石で強化された、ダークの魔法が発動する。空がたちまち暗雲に覆われ、雷鳴が轟いて、周囲一帯にひっきりなしに雷が落ち始めた。もちろん、自然の落雷とは密度も威力も段違いだ。あえて狙いをつけない、空間制圧系の範囲攻撃。高速飛行しているフェニックスにとって、これほど相性の悪い攻撃はない。まるで自分から落雷に飛び込むような格好になって、次から次へと被弾していく。
「ジェミニっ!」
「大丈夫、すぐにはやられないわ! それよりアリーズ――!」
途切れることなく轟く雷鳴のせいで、互いの声すらよく聞こえない。ジェミニはアリーズの耳元で叫ぶように呼びかけた。その提案を聞いて、アリーズは再度ドリアードの召喚を行う。フェニックスの上での召喚技発動は、これで二度目だ。
「守護石ガーネット・生命のブラッド――」
「守護石アレキサンドライト・安らぎのエメラルド――」
同時に、ジェミニも召喚技の詠唱に入る。
「「鍵となって開け――天界の扉!! 幻獣召喚!!」」
二人は声を揃えて詠唱を完成させた。
「ジェミニ……フェニックスの召喚中に、ユニコーンまで出せるの?」
ドリアードとの融合を終えたアリーズが、ジェミニの召喚を見て目を丸くする。
「ええ。同時に出すこともできるようになったんだけど、今は魔法円の下で待機させてるの。なんだか嫌な予感がして……」
「確かに、ダークの動きに余裕を感じるね。何かを待っているみたい」
ジェミニとアリーズが、険しい顔でダークの後ろ姿を見つめる。ただ逃げ回りながら、でたらめに雷を撃ってくるだけ。ダークがそんな生ぬるい相手だとは思えない。これは時間稼ぎと見るべきだろう。
二人の読みが悪い方向に当たる。飛行中のダークが急にこちらを振り返り、意味ありげにニヤリと笑った。
突然、辺りの景色がグニャリと歪む。そして次の瞬間――二人の目の前には、見たこともない光景が広がっていた。
『Re:ターン・プリティスター(第41話)――魔界の最終決戦! 奇跡のスーパー・スタージェミニ――』
草も木も一本も生えていない、岩と砂利だけが広がる荒野。高度三百メートルの上空を飛んでいたはずのフェニックスは、気づけばそんな剥き出しの地面すれすれの低空を飛んでいた。上空に太陽は無く、頭の上には真っ黒な雲と、不気味な暗赤色の空が広がっている。
変わったのは景色だけではない。フェニックスの上に居るジェミニとアリーズは、急に身体が重くなり、力が抜けていくのを感じていた。
「色々と想定外の事態が続いたが――これで我の勝ちだ!」
フェニックスの前方に立ちはだかったダークが、左手を翳して暗黒の球体を出現させる。
「いけないッ! アリーズ!」
「わかってる!」
とっさにアリーズが遠当てを放って迎撃するが、その気弾すらも取り込んで、球体はスゥーっと接近してくる。そして接触の瞬間、拳大だった暗黒の球体は爆発的に膨張してフェニックスを包み込んだ。
全長五十メートルを超えるフェニックスを封じ込めた球体が、再び拳大に収縮する。最後にダークの剣が球体を両断すると、小さな炎が四散してフェニックスは消滅した。
直後、背後に気配を感じてダークが振り返る。
「ダーク、ここはどこなの?」
「日本……いや、地球じゃない気がするね」
ジェミニとアリーズだった。二人は暗黒の球体がフェニックスに触れる寸前に、飛び降りて脱出していたのだ。もっともダークも手応えの軽さを感じていたのか、二人が生きていることに驚いた様子はない。
「ここは正真正銘の魔界の大地よ。我の転移結界によって、我らが居た人間界の空の一部を魔界と一時的に入れ替えたのだ。この地では我の力は倍増し、お前たちの力は半減する」
ニヤリと笑って、ダークが闇の魔剣を構える。
「先に言っておくが、逃げようとは思わないことだ。一定時間以内に我を倒さねば、お前たちは魔界に取り残されることになるぞ?」
「一定時間というのは、どのくらいなの?」
「答える義理は無いな」
「そう――ならば一瞬で決めさせてもらうわ!」
その言葉と同時に、ジェミニの足元に白く輝く五芒星が出現した。そこから広範囲にわたって霧が噴き出す。
「なにっ! これは――」
その霧は魔界の大地の隅々にまで広がっていく。やがて霧が晴れると――そこには別世界が広がっていた。
真っ黒な雲と赤暗い空は、雲一つない澄みきった青空に変わり、岩と砂利だらけの地面は、広大な森林に置き換わる。そして宙に浮かぶダークの足元を中心に、大きな泉が広がっていた。
泉の畔には、凄まじい聖気を放つ神獣の姿。新雪のような純白の体と、宝石のように輝く緑のたてがみと、陽の光を思わせる黄金色の角を持った、美しき一角獣――ユニコーンがたたずんでいた。
「どうなっているのだ……我は確かに魔界に在ったはず!」
「空間を置き換えられるのは、あなただけではないわ。ここは天界の深い森の中。清らかなる神獣ユニコーンの住む聖地よ。この技の中では、あなたも魔界の地の利を受けられないはず!」
動揺した様子のダークに向かって、ジェミニが凛とした声で言い放つ。
天界の森は瘴気を清める。ジェミニとアリーズは、さっきまでの脱力感が綺麗に消え失せて、力が湧き上がってくるのを感じていた。
そして天界の泉は、その者の真実の姿を映し出す。
「それが、あなたの本当の姿なのね」
ジェミニがダークの足下を見つめながら、独り言のようにつぶやく。
湖面に映るダークの姿に、二人の視線が注がれる。髪は膝に届くほどに長く、女性的な整った顔立ちで、頭には豪華な王冠を戴く。冠を取り囲むように十本の角が鋭く伸び、背中には禍々しい六枚の蝙蝠の羽が生える。男性的な均整の取れた体躯は、全身が黒い鱗で覆われている。美しいとも醜いとも形容し難いが、見る者を釘付けにするような、そんな強烈な印象を抱かせた。
「……神である我の姿を暴き、辱めた罪――お前たちの命で贖ってもらうぞ!」
「ええ。決着を――つけましょう!」
ジェミニがユニコーンを呼び寄せて、アリーズと一緒に飛び乗る。
ダークはありったけの魔力を振り絞って、五百を超える魔力球を出現させて一斉に放つ。だが、その全てがユニコーンに触れる前に浄化されて消滅した。迸る神獣の聖気が、穢れた魔を祓ったのだ。ユニコーンは一息に森の中を駆ける。
「そうはさせん!」
ダークが今度は暗黒の球体を出現させて、ユニコーンごと檻に閉じ込めようとする。しかし、ユニコーンの角が触れた瞬間に暗黒の球体は消滅した。
ユニコーンは標的に向かって一直線に駆ける。その角は邪宝石で強化されたオートバリアすらも易々と突き破って――驚愕の表情を浮かべたダークの胸に、深々と突き刺さった。
“プリティスター・ユニコーン・リターン”
ユニコーンのいななきが天高く響き渡り、聖なる一角が眩いばかりの光を放つ! その光は太陽を思わせる巨大な光球となり、ジェミニとアリーズの視界を真っ白に染めた――。
「ぐあああああああああああああぁぁぁ――ッ!」
膨大な聖気がダークの体内に流れ込み、ダークはたまらず絶叫を上げる。
光が収まった後には、うつ伏せに倒れたダークの姿があった。天界の森と泉は、ユニコーンとともに消え失せており、目の前には元の岩と砂利だらけの魔界の荒野が広がっている。
「やったの?」
小声で問いかけるアリーズに、ジェミニは小さく首を横に振った。
「ユニコーンが森と同時に消えてしまった。恐らく浄化しきれなかったんだと思うわ。起きてくるわよ!」
油断なく身構える二人の前で、ジェミニの言葉通りダークの指がピクリと動く。ダークはゆっくりと身体を起こすと、震える唇を動かした。
「邪宝石開放――我が肉体を蝕む聖気を消せ!」
宝石を二つ消費したのだろう。ダークの身体が白い光に包まれ、すぐまた青い光に包まれる。ダークは大きく息を吐き出すと、美しい顔を狂気に歪め、怒りに震える声を絞り出した。
「よくも、我に恥をかかせてくれたな……。だが、これでお前たちは万策尽きた。嬲り殺しにしてくれるッ!」
ダークが闇の魔剣を顕現させて、ジェミニに猛然と斬りかかる。これも魔界で戦う恩恵なのだろう。その剣の威力も速度も、アリーズが戦った時とは段違いだった。
ジェミニはその全てを回避しつつ、口を小さく動かして詠唱に入る。アリーズはジェミニを庇うように、続けざまにダークに遠当てを放った。だが、かなり強い気を込めたにもかかわらず、全てオートバリアに弾かれてしまう。
「やっぱり、防御力もとんでもなく上がってる……」
「その通りだ。もはや――二対一でも我の相手にはならぬと思え!」
お返しとばかりに、ダークはアリーズに二百を超える魔力球を放つ。
“水鏡流合気柔術――表伝! 合気舞い!”
「あっ、ぐっ……」
強化された魔力球を、それでもアリーズは全て弾き返す。しかし威力を殺しきれずに、両腕に痺れるような鈍痛が走った。
「空に咲く花――蝶の剣! 顕現せよ――!」
“プリティスター・ソード・リフロール”
リフロールが一閃して、ダークの斬撃を流した。魔界の大地で、ダークの闇の魔剣とジェミニの光の聖剣が激しくぶつかり合う。
一撃の威力はダークが上だが、剣速は圧倒的にジェミニが勝る。十撃、百撃と畳みかけられ、ダークの防御が追いつかなくなる。
「おのれ……。邪宝石開放――我の身体能力を高めよ!」
再びダークの攻撃が勢いを増す。徐々にジェミニが押し込まれ、その身体に暗黒の刃が届き始める。しかし、ジェミニの目に恐れはない。回避と防御に専念しつつ、次なる詠唱を開始する。
「思考加速開始――リミッター解除! 踏み出せ――勇気の一歩!」
“プリティスター・アクセレレーション”
途端にジェミニがぐんと加速して、再び形勢が逆転する。ジェミニの超高速の剣技を前に、ダークはまたも防戦一方に追い込まれる。ついには受け切れなくなって、オートバリアも木っ端微塵に粉砕された。ダークは飛翔して大きく後ろに下がる。
「なぜだッ! 見知らぬ魔界に飛ばされ、神である我の力を見せつけられて、なぜ心が折れぬ? なぜそうまでして戦えるのだッ!」
ダークの問いに、ジェミニの口元が緩む。今となっては大切な仲間である、かつての仇敵の言葉が脳裏に蘇ったのだ。
――戦場に出るならよ、決めるべき“覚悟”ってもんがあるだろ? いい加減に腹をくくりやがれ!
「腹をくくっているからよ。私には立ち向かう覚悟があって、負けられない理由があるの。いつだって……ギリギリの戦いばかりだった。今回だけが特別に苦しいわけではないわ!」
「おのれ――ッ!」
ダークの渾身の一撃をジェミニが防御技の“パラード”で受け、さらに剣の柄を狙って突き技の“トゥシュ”を繰り出す。高々と弾き飛ばされた闇の魔剣は、ダークの手から離れたことで魔力を断たれ、黒い霧となって消えていく。それを見届けてから、ジェミニが小さく笑った。
「蝶舞が“私にも一発殴らせろ”と言ってるわ」
「えっ……蝶舞ちゃんって?」
ジェミニの言葉に、援護のタイミングをうかがっていたアリーズが目を丸くする。
ジェミニはリフロールを光の粒子に戻すと、両手を重ねて胸に当てた。かつてのように星宝石を二つ消費する必要も、それらを融合してアレキサンドライトを生み出す必要もない。ただ詠唱を紡ぐのみ。
「蝶々は空高く舞い上がり、花びらは地を七色に染める。ひらりひらり、ふわりふわり、天の羽は風に舞い、地の花びらは風に揺れる。儚くも、慎ましく、可憐に、優雅に、来たれ――空と地に咲く花の精よ!」
“プリティスター・モード・ツインシップ”
詠唱が完成すると同時に――ジェミニの身体が二つに分かれて左右に跳んだ。
「舞い踊れ! 希望にみちる魂 スターライブラ!」
スターライブラは、新たな姿で颯爽と荒野に降り立つ。純白のドレスを飾るのは、紫のまだら模様の縁飾り。フレア状のスカートの内側は、朝焼けの空の色に彩られ、額には金色に輝く大きなティアラを戴く。
「咲き誇れ! 愛にあふれる魂 スターパルテノ!」
スターパルテノもまた、新たな姿で可憐に荒野に佇む。純白のドレスを飾るのは、明るく優しい色合いのフリル。フレア状のスカートの内側は、夕焼けの空の色に彩られ、頭部の大きな赤いリボンが風に揺れる。
二人とも腰の辺りには、身体を水平に囲むように大きな光の輪が出現し、そこから迸った聖気がその全身を覆っていた。
「スーパー・スターライブラと、スーパー・スターパルテノ……?」
アリーズが呆然とした声でつぶやく。ライブラはそんなアリーズにニコッと笑いかけると、ダーク目がけて飛び出した。ダークはとっさに百の魔力球を生み出して撃ち出す。だがライブラは魔力球なんて存在しないかのように、ひらひらと躱しながら、弾幕の中心を突っ切ってダークに迫る。
「おのれっ!」
ダークは闇の魔剣を顕現させると、ライブラを上下真っ二つに斬り裂いた――いや、斬り裂いたかに見えた。だがそれは残像。ライブラは傷一つ負っておらず、余裕の笑みを浮かべている。何が起きているのかもわからないまま、ダークは狂ったように闇の魔剣を振り回す。しかし、ライブラの掴みどころのない身のこなしの前では、その神速の剣戟が掠りもしない。
これは蝶舞の洞察力と運動神経、そしてライブラの蝶の舞の特性が結びついた、半固有技とも呼ぶべきもの。俊敏性ならライブラよりもダークの方が上だろう。だが空を飛ぶ蝶々に掴みどころがないように、ダークの剣が、ゆっくり動いているはずのライブラの動きを捉えられないのだ。
「有り得ん……神である我が、こんな小娘に振り回されることなど、あってはならんのだ――ッ!」
「はいはい、神様は偉い偉い。ところで神様、頭に血が上り過ぎて、周囲の警戒が疎かになってるよ? パルテノをほったらかしにしといて、いいのかな~?」
ライブラが人差し指を立てて、楽しそうにダークを挑発する。
言われてダークがパルテノの方を見るのと、パルテノの召喚技が完成するのが、ほぼ同時だった。
「鍵となって開け――天界の扉! 幻獣召喚!」
パルテノの足元の五芒星から、広範囲にわたって霧が噴き出す。霧が晴れるとともに、天界の森林が再び姿を現し、ダークの足元には澄んだ湖面が広がった。
瘴気に淀んだ空気は聖気に澄んだ空気に変わり、ダークとプリティスターとの力関係も逆転する。
「しまった……! お前の目的は、最初から時間稼ぎだったのだな?」
「当然でしょ? 私たちの目的は雫ちゃんを取り戻すことなんだから。神様も、ちょっとは頭を使わないと」
ライブラはダークを小馬鹿にするように、人差し指で自分の頭をちょんちょんとつついて見せる。
「おのれっ!」
苛立ったダークが、ライブラに左手を向けて暗黒の球体を出現させる。だが、それがライブラに命中するよりも早く、割って入ってきたユニコーンの角に貫かれて球体はあっけなく消滅した。
「あなたの相手は、この私よ!」
ユニコーンに騎乗し、リフロールを右手に持ったパルテノが、ダークの前に立ちはだかる。
「二度も同じ技を食らう我ではないッ! 邪宝石解放――我を護る障壁となれ!」
ユニコーンの角とリフロールの斬撃。その恐るべきコンビネーション攻撃を、ダークもまた、邪宝石の加護と闇の魔剣で迎え撃つ。
激しく剣を交える二人――だが、さっきから参戦のタイミングをうかがっていたアリーズは、それを見てパルテノの援護を思いとどまった。
(パルテノの動きがおかしい。ユニコーンの角を突き立てるチャンスはあるのに、あえて剣の戦いに持ち込んでいるの……?)
そこでアリーズがパルテノの狙いに気づく。角を突き立てて力を使ってしまったら、この聖なる結界も消えてしまうのだと。
だから、きっとこれは時間稼ぎ。だけどパルテノとライブラは、時間を稼いで一体何をするつもりなのか?
その時、今度はライブラの召喚技が完成する。
「鍵となって開け――天界の扉! 幻獣召喚!」
手のひらから零れ落ちるように投じられた宝石が、ライブラの前方の地面に、白く輝く五芒星を形作る。
そこから勢いよく炎が噴き出す。そして飛び出す――全長五十メートルを超える巨大な炎鳥フェニックス。ライブラはあえてその背には乗らず、涼しい顔でフェニックスに命じた。
「さあ、あなたの相手は魔神ダークよ。殺さない程度に相手をしてあげて」
「なん――だと!」
同時にパルテノも身を翻して跳び降りると、ユニコーンに単身での攻撃継続を命じる。天界の深き森の中で、神獣化したフェニックスとユニコーンが、魔神ダークと激しく衝突を繰り返す。
その隙に、ライブラとパルテノはアリーズと合流した。
「もう、何がどうなってるんだか……。相変わらず反則で無茶苦茶だね、ジェミニは」
アリーズが呆れてそう言うと、パルテノが困ったように微笑む。その時、ずっとモジモジとアリーズを見つめていたライブラが、意を決したようにアリーズに駆け寄り、勢いよく抱き着いた。
「えっ……えぇっ? どうしたの? ライブラ!」
困惑するアリーズを他所に、ライブラはアリーズの首に両腕を回して頬擦りする。
「未幸さん……未幸さん……逢いたかった――! 私、思い出したんです。美術館で助けてもらったことも、大阪で遊んでもらったことも、再会の約束のことも……。守れなくて、ごめんなさい」
アリーズの目がいっぱいに見開かれる。今度はアリーズが両手でライブラの頭を掴んで、おでこがくっつくくらいの距離で彼女の目を覗き込む。
「もしかして――蝶舞ちゃんなの?」
「はいっ!」
アリーズはわけがわからず、救いを求めるようにパルテノを見る。パルテノは小さく微笑んでから、真剣な表情でアリーズを見つめ返した。
「事情は後で説明するわ。それより、今はダークを倒して雫さんを助けないと」
「そうだね。でも、どうすればいいのかな……。わたしの裏当ても、ジェミニのユニコーンですらも通じなかったのに……」
アリーズが悔しそうに唇を噛む。ただダークを倒すだけなら方法はある。しかし同時に雫を救い出すとなると、もはや打つ手がない。
「“セントエルモの火”を使いましょう。それしかないと思うわ」
「ダメだよ! それじゃ、雫ちゃんを死なせちゃう!」
パルテノの提案に、アリーズが顔色を変えて反対する。あれは敵を消滅させる技だ。
「私たち二人だけの技ならそうね。だから、アリーズが雫さんを炎から守って。今ここで、三人の新しい技を作りましょう!」
「そんなことできるの? それに、練習する時間だってないのに……」
目を丸くするアリーズに、パルテノが力強い口調で語りかける。
「いつだって……足りないものばかりだった。そんな中で、私はこれまでに六つの技を誕生させてきたの。アリーズが力を貸してくれるなら、七つめの技――生み出せない理由がないわ! お願い、未幸さん。自分を信じて! 未幸さんの雫さんを救いたいって気持ちは、みんなの笑顔を守りたいって想いは、きっと“煌めく星々の円環”に届いているはずよ!」
アリーズはパルテノの目をまっすぐに見つめて、懸命に訴える彼女の言葉に耳を傾ける。その顔からは次第に不安の色が消えて、表情が凛々しく引き締まった。
「わかったよ、結衣ちゃん。やってみる!」
アリーズの瞳に決意の光が宿る。ここまで次々と奇跡を見せてもらったのだ。自分だけ自信が無いなんて言っていられない。
「そうだ!」
名残惜しそうにアリーズから離れたライブラが、パッと顔を輝かせて二人を見回す。
「結衣、未幸さん、次の約束をしましょう!」
ライブラが意味ありげに微笑んで、小指をピンと立てた右手を突き出す。パルテノとアリーズも、ライブラの意図を汲み取って頷くと、笑顔で自分の小指を絡めた。
「今ここに――あの日の約束は守られた!」
ライブラが表情を引き締めて、厳かな声で宣言する。
「そして新たに約束する。私たちの友情と絆は永遠であることを!」
パルテノが二人の顔を交互に見ながら、力強く宣言する。
「じゃ、いっくよ~! わたしたちはダークをやっつけて、必ず雫ちゃんを救い出す!」
アリーズが目を輝かせ、元気いっぱいに宣言する。
「「「指切りげんまん、嘘ついたら、針千本飲~ます!!!」」」
最後は三人で声を合わせて、勢いよく指を切った。
誓いの儀式を終え、三人はダークに目をやる。ダークと二体の神獣の姿は、森の木々の遥か上の、陽光が降り注ぐ空にあり、戦いはますます激しさを増していた。
どうやらダークは、ユニコーンの角の攻撃を嫌って空に逃げたらしい。しかし、神獣化したユニコーンは自在に天空を駆け回る。
フェニックスの飛翔による突撃とダークの魔力球の遠距離戦闘。そしてダークの闇の魔剣とユニコーンの聖なる角による近距離戦闘。目まぐるしく攻守を入れ替えながら、苛烈な空中戦が繰り広げられる。
少しの間その様子を眺めてから、三人は揃って両手を大きく広げ、その手を胸の中心で合わせて祈りを捧げた。
「絶望の荒波よ、和らぎ給え」
ライブラの祈りとともに、その身体が深紅の炎に包まれる。
「憎しみの嵐よ、鎮まり給え」
パルテノの祈りとともに、その身体が緑色の炎に包まれる。
「希望の光よ、尊き命を救い給え」
アリーズの祈りとともに、その身体が黄色の炎に包まれる。
やがて三人の身体は赤と緑と黄色の炎の球体と化し、ダークの周囲を旋回しながら飛ぶ。その軌跡の記録のように、草木に覆われた地面には緑の魔法円が、青く澄んだ空には赤の魔法円が、ダークの身体を囲むように黄色の魔法円が、それぞれ刻まれていく。
そして魔法円が完成した瞬間――天から巨大な炎の柱が墜ちてきた。
ライブラとパルテノとアリーズが声を揃えて、最後の祈りを高らかに唱える。
「闇に迷える魂を、道に迷いし旅人を、光へ導く聖なる灯火」
“プリティスター・トリニティ・セントエルモ・プリフィケーション”
『セントエルモの火』とは太古の昔、嵐を収め、船乗りを導いたとされる双子の守護神の聖なる火。
歴代プリティスターの中でも最強の威力を誇る浄化技は、アリーズの祈りが加わることで、最大の解呪技の特性を備えた上位技へと進化する。
天界の巨大な火柱が魔界の地に堕ちてくる。それは導きの炎となって、魔界と人間界と天界を繋ぎ、三界から魔神ダークの存在を焼き尽くす。
「認めんッ! こんなことが……この我が滅びるなど――ッ!」
断末魔の叫びを上げて、魔神ダークが消滅する。炎の柱の周囲を旋回していた三つの炎の球体は、炎の柱が消滅すると同時に重なり合って、三人の少女の姿で地表に降り立った。一人は元の姿に戻ったジェミニ。あとの二人はアリーズと、彼女が大事そうに抱える人間の少女――神代雫だった。彼女はアリーズの腕の中で意識を失っており、服も元の手術着に戻っている。
天界の森林も魔界の大地も、すでに消え失せていた。星々の輝きを秘めたアシンメトリーの衣装が、太陽の光を宿した純白の衣装が、人間界の――東京の上空の風を受けて翻る。
スーパー・スタージェミニとスーパー・スターアリーズは、互いに顔を見合わせて微笑み合う。するとその時、上空から二つの物体が落ちてきて、ジェミニの手のひらに受け止められた。
「これって……」
「サークル・オブ・ダークネス?」
それは、シルの“サークル・オブ・スターズ”を模して創られた、“サークル・オブ・ダークネス”という闇の腕輪。魔神ダークの核を二つに割って変化させたもので、いわばダークの本体だった。
「うーん、もう禍々しい力は感じないかな……」
「そうね。持って帰ってシルに相談しましょう」
アリーズが腕輪を覗き込み、ほっと安堵の息を吐く。ジェミニも笑顔で頷いた。
闇の腕輪は“セントエルモの火”で浄化されており、もう瘴気は発していない。邪宝石も一つも残っていなかった。管理には注意が必要だが、当面の危険は無いように思われた。
「雫さんは大丈夫?」
「うん。今のところ、呼吸と脈拍は安定してるよ」
二人は飛翔速度を上げると、シルの元へと急いだ。
戦いはまだ終わっていない。地上ではオルトスとラドゥとシメールが、今も強敵との戦いを繰り広げているはずだから。
「ここはどこだ? 俺は……」
オルトスがゆっくりと目を開ける。最初に視界に飛び込んできたのは灰色の天井と、そして窓の外に広がる青空だった。
「あっ、気がついた?」
そこで誰かがひょっこりと顔を出す。嬉しそうにこちらを見つめるのは――若葉未幸だった。気がつくとオルトスの右手は未幸の両手に包むように握られていて、絶え間なく気が流し込まれている。彼にはまだ使えないが、水鏡流の気功治療だ。
「よかった。どこか痛むところはない?」
そして未幸の隣から聞こえてくる、穏やかで柔らかな声は――。
「テメエ! 生きてやがったのかッ!」
驚きのあまり、いきなり飛び起きて立ち眩みを起こしたオルトスの身体を、その声の主が――天羽結衣が慌てて支える。
「急に身体を動かしては駄目よ。怪我は治っていても、かなり出血していたそうだから」
オルトスは、何とか上体を起こして周囲を見渡した。どうやらここは廃遊園地の中の、レストランかカフェになるはずだった建物らしい。オルトスはソファに寝かされていたらしく、すぐそばの椅子にはラドゥがちょこんと座っていた。
「おはよう、オルトス。お互いに生き残っちゃったね」
「一体、何がどうなってやがる? 俺は――確かに死んだはずだ……」
オルトスの鋭い視線を受けて、ラドゥは説明を始める。
「僕は悪魔の軍勢に対抗するために、ラードーンになってシメールと融合した。そして敵を殲滅した後に、死にかけている君を発見したんだ。それで僕は、君とも融合することにした。ラードーンの一部になってしまえば、どんな怪我でも一瞬で治るからね。でも人間の姿に戻る算段なんて無かったから、その後、魔眼を使って自分を石化させたんだ」
ラードーンは守護と報復を司る獰猛な悪魔で、普通に悪魔化しただけでも長時間理性を保つのは難しい。ましてやシメールやオルトスという異物と融合したのだ。下手をすれば、本能のままに暴れ回る最強最悪の悪魔に成り下がる恐れがあった。
ラドゥの話の続きを、結衣が引き取った。
「そこからは私が説明するわね。ダークを倒して地上に戻った私とアリーズは、石化したラードーンを見つけたの。それで一か八か、ユニコーンを召喚して元に戻そうとしたのよ。この前と違って三人がすっかり融合されていたから、多分、通常のユニコーンなら戻せなかったと思う。でも、スーパー・スタージェミニの力で神獣化したユニコーンの解呪の力は強かった。ううん――強すぎたの。ごめんなさい……」
そう言って、結衣が深々と頭を下げる。
「そのおかげで俺たちは元に戻れたんだろう? 何を謝ることがある?」
強すぎたとは、どういうことなのか? オルトスは結衣の言葉を訝しんで問いただす。
「そうなんだけど、ユニコーンの力が強すぎて……あなた方の悪魔まで祓ってしまったみたいなの」
結衣が申し訳なさそうに、さらに小さくなって頭を下げる。それが彼らにとって望ましいことであったとしても、本人の許可なく勝手に行っていいことではない。
結衣に続いて、彼女の肩にとまっているシルが口を開いた。
「ボクも確認したが、君たちはもう半悪魔じゃない。正真正銘の人間だ。君たちに憑依していた悪魔は、魔界に還ったようだね」
考えてみれば、そうなる可能性は十分にあったのだ。以前シメールと融合したラードーンをジェミニがユニコーンで元に戻した際に、ラドゥの中の悪魔ラードーンは、しばらく力が弱まっていたらしい。それを神獣化したユニコーンでやったのだから、最上位悪魔とて耐えられはしなかったのだろう。
しばらくあっけにとられた顔をしていたオルトスが、フッと小さく笑う。
「謝ることはねえよ。どのみち失ったはずの命だ。まあ悪魔とはいえ奴とは長い付き合いだったし、一言くらい挨拶したかったとは思うがな」
そう言いながら、オルトスは自分に憑依していた悪魔である、オルトロスのことを思い出す。決して強力な悪魔ではなかったが、彼に相応しい勇敢な悪魔だった。
「僕も感謝してるよ。ラードーンには悪いことをしたけど」
ラドゥも自分に憑依していた、ラードーンのことを思い出す。ラドゥは三人の中でも特に悪魔と仲がよく、話し相手になってもらったこともあった。
「あのね、その事なんだけど……」
未幸が口を開きかけた時、奥の部屋からシメールが現れた。悪魔が消えたことで魔眼も失われたのだろう。彼は右目に眼帯をつけていた。
「私も気にしていませんよ。感謝できるほどに、自分に生きる価値を認めていませんけどね」
シメールも、自分に憑依していたキマイラのことを思い出す。彼の悪魔は二つの真逆の魔格を持っていたため、他の二人よりも気持ちは複雑だった。でも最後まで力を貸してくれた彼らに、やはり感謝をしていた。
「シメール、雫ちゃんと七海ちゃんは大丈夫?」
未幸の問いに、シメールが頷く。彼はさっきまで奥の部屋で、雫とパンドーラ――七海の診察と治療を行っていたのだ。
「神代雫さんの容態は……大丈夫とは言えませんが、今は安定しています。七海さんはもう目を覚ましていますよ。目立った外傷は無いし、身体の痛みも世界樹の雫で癒されたようです」
ダークの魔剣で真っ二つに斬られたパンドーラだが、腕輪の加護によって肉体の損傷は無かった。ただ“世界の法則”による反動ダメージで、永久に意識が戻らない可能性もあったらしい。シルが瓦礫の中からダークが回復に使っていた緑色の液体を見つけて、それを七海に飲ませたことで意識が回復したらしい。
「シル、七海さんは大丈夫?」
結衣が心配そうに問いかける。未幸がシメールに尋ねたのとは意味が違い、これは七海の気持ちを慮ったものだった。自分がやってきたことを思えば、彼女がショックを受けていないはずがないのだ。
「ああ。もう少しだけ……そっとしておいてやってほしい」
シルの言葉に、結衣と未幸は静かに頷いた。
魔神ダークが消滅したことで、パンドーラは使徒としての力と、ダークの影響力を失ったらしい。パンドーラの赤い戦闘服は、使徒になる直前に七海が着ていた明洸中学校の制服に変化していた。ダークの影響で好戦的になっていた性格も、本来の穏やかさと落ち着きを取り戻している。
だがダークの影響を受けていたとはいえ、ダークに操られていたわけではない。彼女のこれまでの行動の全ては、紛れもなく彼女自身の判断で行われたものだ。結衣たちにそれを責める気が無いとしても、本人が割り切れるものではないだろう。
「ヘリコプターの音が聞こえる。迎えが来たみたいだよ、結衣ちゃん」
未幸がドアを開け、救助に来たヘリコプターに大きく両手を振って合図する。シルが確認したところ、ダークが滅びた影響なのか、東京中のフコウダーは全て消滅したらしい。もちろん東京全土を囲んでいた強固な結界も消えていた。
おかげで東京中の人々が一斉に目を覚まして、今は大変な騒ぎになっているのだとか。都内の病院はどこも使えないと判断して、結衣は目を覚ましたばかりの周防にお願いして、隣の県の大病院への雫の入院と、移送用のヘリコプターを手配してもらったのだ。
「私はこれから雫さんに付き添って病院に行ってくるから、みんなはとりあえず私の家で休んでいて。お父さまとお母さまにはちゃんと許可を取ってあるわ。すぐに真宮さんが車で迎えに来てくれるはずだから」
結衣がオルトス、ラドゥ、シメールにそう伝えると、彼らはそれぞれ了解の意を示した。愛優と優斗も、きっと心配していることだろう。
「結衣、どうやってご両親の許可を取ったんだい?」
「あの家を、知り合いの避難所に使わせてほしいとお願いしたのよ。今は電気や水道が使える場所も少ないはずだから」
なるほど、とシルが頷く。確かに現在の東京は被災地扱いだから、大抵のことは追求されずに許されるだろう。
雫が担架に乗せられて、ヘリコプターに収容される。その様子を食い入るように見つめる七海の肩に、結衣がそっと手を置いた。
「七海さん、私たちも行きましょう」
「でも……私は……」
「今、雫さんが一番必要としている人は、あなたでしょう?」
結衣は七海の手を引いて、機内に乗り込む。その後に続こうとした未幸が、あっ! と小さく叫んでオルトスたちの元に駆け戻った。
「あのね! ユニコーンの力でみんなが元の姿に戻った時、一瞬だけ三体の悪魔の姿が見えたんだ。わたしには笑っていたように見えたよ!」
未幸はそれだけ伝えると、肩に乗せたシルと一緒に機内に駆け込んだ。
雫と七海と結衣と未幸、それにシルを乗せたヘリコプターは、廃遊園地の上空高く舞い上がり、一路病院を目指して飛び去った。
病室のベッドで眠っていた、雫の瞼がピクリと動く。彼女の右手を両手で握っていた未幸が、七海の手を優しく掴んで、自分の手と入れ替わりに雫の手を握らせた。
お疲れ様、と小声で囁く結衣に、未幸は寂しげな笑みを返す。
未幸は自分の無力さを噛み締めていた。気功治療は確かに役には立っただろう。彼女が目を覚ましたのはその効果に違いない。だけど、それで雫の余命がどのくらい延びるのかというと、きっと瞬きするほどに微々たるものだ。
医師からはすぐに家族を呼ぶようにと言われており、すでに雫の両親は大阪を発ってこちらに向かっているはずだ。それが間に合うかどうかはわからない。今は容態が落ち着いているが、おそらく次の発作が最後になるだろうというのが医師の見解だった。
七海の手に代わった途端に、雫の手に力が籠る。きっと七海の手の感触を身体が覚えているんだろう。七海はあえて声をかけずに、雫が自分の意思で目を覚ますのをじっと待つ。結衣は未幸に目配せをして、シルを連れてそっと病室を出た。
それからさらに五分ほどが過ぎて――雫がゆっくりと目を開く。
最初に目に入ったのは、心配そうにこちらを見つめる赤い瞳。美しかった長い髪は、肩の上で不揃いに切られているが、それは紛れもなく、この世で一番大好きで大切な親友の姿。
「……七海?」
「うん。おはよう、雫」
七海の手に少しだけ力が入る。言葉の代わりに、触れた手から気持ちを伝えようとするかのように。
話したいことがたくさんあった。伝えたいこと、聞きたいこと、そして謝りたいことがあった。だけど……それを全て聞いて答えを返すだけの力は、もう雫には残っていないだろうから。
「……夢を見ていました」
雫の目から、ツゥ――と一筋の涙がこぼれ落ちる。
それだけで七海は、雫がこれまでの出来事を全て覚えているのだと理解する。七海がパンドーラになって何をしてきたのかも。きっと、雫自身が魔神ダークとなってジェミニやアリーズたちと戦ってきたことも。
「助けてあげられなくて……ごめんね、雫。私、これでもいっぱい頑張ったんだよ。献血に走り回って、一人でフコウダーと戦って――雫には話せないような、悪いこともいっぱいしてきたんだ……」
黙っているつもりだったのに、苦しめたくないのに――雫の目を見たら、声を聞いたら、溢れ出す気持ちと言葉が抑えられない。
これ以上余計なことを言わないように、七海は自分の口を両手で塞いで嗚咽を漏らす。雫は穏やかな表情で、そんな七海を見つめていた。
「はい、全て知っています。七海、辛い思いをさせてしまいましたね」
「神様なんて大嫌い。私みたいな酷い人間をいつまでものさばらせておいて、雫みたいな優しい子から連れて行くんだから。私が代わりに死ねばいいのに――何を捧げても、雫を助けてあげられないよぅ~」
後から後から、ボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちるのを、もう七海は止めようとはしなかった。
雫は声をかける代わりに、ありったけの力で七海の手を強く握った。そして雫も、静かに涙を流す。でも彼女の涙は、七海の悲しみと悔しさの涙ではなくて、喜びと幸せの涙だった。
二人でひとしきり泣いてから、七海は雫との思い出を語り始める。どれだけ楽しかったのか。どれだけ幸せだったのか。どれだけ雫に救われてきたのかを。
「私も幸せでした。七海を傷つけてしまったことは、苦しめてしまったことは、申し訳ないと思っています。それでも、私は七海とお友達になったことを後悔していません。やり直したいとは思えないんです。私は……幸せでした」
七海は雫の腕に突っ伏して泣き出す。雫はそんな七海の頭を、もう片方の手で優しく撫でた。
病室のドアの外では、結衣と未幸が二人の会話に耳を傾けていた。結衣と未幸がシルに頼んで、聴こえるように魔法をかけてもらったのだ。
未幸は顔をぐちゃぐちゃにして、声を押し殺して泣いていた。結衣は目を閉じて、胸の中心に両手を当ててじっと考える。
やがて結衣はパチリと目を開くと、すっきりした顔でシルを見つめた。
「シル、私の願いが決まったわ」
そう言いながら、結衣は右手に嵌まる“煌めく星々の円環”をそっと指で撫でる。
腕輪はかつて見た時と同じく、全体が淡く光っていた。魔神ダークを倒したことで東京中のフコウダーが消滅したために、結衣と未幸の腕輪は再び星宝石でいっぱいになったのだ。
「本当にいいのかい? 冷たい言い方になるが、こんな不幸はどこにでもある。結衣、君は君自身の幸せのために願いを叶えるべきだ」
シルは諭すように結衣に語りかける。そう――こんな悲しい出来事はどこにでもある。誰にだって起こり得る。人生は足りないものばっかりで、だから人はいつも間違える。喜びを悲しみに変えて、幸せを不幸で塗り潰して、最後はみんな人生の幕を閉じる。
結衣はじっとシルの話を聞いてから、いつかのようにシルを手のひらに乗せてまっすぐに目線を合わせた。薄紫の結衣の瞳に、シルの姿が映ってゆらゆらと揺れる。まるでシルの本心を、問いただすかのように――。
「わかっているわ、シル。確かに全ての人を救うことはできない。でも、私は目の前の涙を止めると誓ったの。私は彼女たちの運命を諦めない。こんな結末は認めない。だから、戦うわ。雫さんの病気が治った後も、ずっと」
シルは結衣の瞳をじっと見つめて話を聞いてから、あの時と同じように頷いた。
「ありがとう、結衣」
そう言ったシルの目から、ポロポロと小さな雫がこぼれる。未幸にとっては二度目、そして結衣にとっては初めて見るシルの涙だった。本当は、誰よりも雫を救ってほしいと願っていたのはシルだったのだから。
結衣は腕輪を胸に当てて、小さな声で願う。
「サークル・オブ・スターズよ、契約者たる天羽結衣がここに願う。神代雫さんの身体を蝕む病を消し去って! どうか彼女が、これから先も七海さんと穏やかに暮らせるように、力を貸してあげて」
結衣の願いを聞き届け、腕輪が眩い光を放つ。それと同時に、腕輪に宿っていた全ての星宝石が消失した。
「ありがとう」
結衣は腕輪を抱きしめて、心からの感謝の気持ちを伝える。そして気づく。戦うと誓った日から今日まで、辛いことも多かった。でも願いなんて叶えなくても、自分はとっくにこの腕輪に救われていたんだって――。
――コンコン。
軽くドアをノックしてから、結衣は未幸とシルと一緒に雫の病室に入る。病院の近くの花屋で買ってきた、大きな花束を抱えて。
雫はベッドから起き上がり、目を丸くして驚いていた。少しも思うように動かなかった身体が、今は自由に動く。夜も眠れなかった痛みも苦しみも、まるで夢であったかのように消え失せていた。
「回復おめでとう、雫さん。私の名前は天羽結衣。こちらは若葉未幸さん。シルは――紹介するまでもないわね」
その言葉を聞いて、雫は何が起きたのかを全て理解した。もちろん結衣のことも、未幸のこともわかっている。ダークとして、彼女たちと戦った記憶が残っているのだから。そして、腕輪の願いがどれだけ貴重なものかってことも――。
「ありがとう……ございました。天羽結衣さん、わたしは酷いことをしてしまったのに――こんな……」
雫が感謝の気持ちを伝えようとして、言葉に詰まる。とてもじゃないけど、この厚意に報いる言葉なんて思いつかない。あるはずがない。
結衣は静かに首を振って、もう十分だと微笑む。そんな結衣に、七海が飛び込むように抱きついた。
七海は結衣の胸の下に頭をくっつけて、安堵のあまり、力の入らない指で結衣の上着を掴む。すぐに立っていられなくなって、そのままズルズルと手が下がっていって、最後には結衣の足首を両手で掴んで――まるで土下座をしているみたいにうずくまる。
そんな姿勢で、七海は全身を震わせてすすり泣く。ほとんど声になっていなくて、何を言っているのか聞き取れない。ただ“ありがとう”と“ごめんなさい”を繰り返しているんだってことは、何となく伝わってきた。
結衣は床に屈み込むと、両手をいっぱいに広げて七海の身体を優しく抱き締め、そっと頭を撫でた。
結衣の後ろで、未幸が七海と同じくらいに、でも七海と違ってわんわんと声を立てて泣いていた。シルも静かに涙を流している。冷静沈着に見せてはいても、本当は誰よりも情に熱くて、繊細で心優しい妖精なんだってことは、七海も含めたこの場の誰もがよく知っていた。
結衣は自分の中に居る、蝶舞の魂に語りかける。「私は運命に勝てたのよね」って。
蝶舞も喜んでいて、お祝いの気持ちを伝えているようだった。ジェミニに変身していないとはっきりとは感じられないけれど、何となくそんな気がした。
ベッドに目を向けると、七海も未幸もシルまでもが、雫に抱きついて談笑していた。結衣もクスリと笑って、その輪の中に加わる。
決戦の日――激動の一日が終わる。窓から外を見ると、すでに陽が沈んでおり、夜空には美しい星々が煌めいていた。
『Re:ターン・プリティスター(第40話)――スターアリーズの使命と若葉未幸の決断――』
2023-01-09

灰色から黒へのグラデーションがついた長髪に、額を飾る金色のカチューシャ。金色の房飾りがあしらわれた藍色のドレスに、全身を囲むように円形に伸びる、太くて赤いリボン。
新たなる姿と力を得た新生ダークは、フワリと宙に浮き上がると、右手をまっすぐ前に伸ばした。
「えっ?」
一瞬、攻撃が来るかと身構えたアリーズが、違うと気づいてダークの指の先――自分の後ろを振り返る。彼女たちが破壊した扉があった場所に、暗黒の魔法障壁が出現し、出口を完全に塞いでいた。
「これって、閉じ込められたってこと?」
「そうだ。腕輪を回収した以上、もうお前たちとの遊びは終わりだ。今回は逃がさん。そろそろ天界や魔界の神々との戦いにも備えねばならんのでな」
ダークの口から天界と魔界という言葉を聞いて、アリーズの表情が険しくなる。それは最大の懸念事項だった。シルも飛んできて、アリーズの肩に止まる。
「やっぱり天界や魔界を巻き込んだ戦争をする気なんだね。魔神ダーク、あなたの本当の目的は何?」
七十二柱もそうだったが、魔神や悪魔は人間の悪意だけを切り取ったような存在だ。よってダークが話し合いの通じる相手ではないことはわかっている。
それでも知っておく必要があった。相手が絶対的な優位にある今こそ、真の目的を聞き出す最大のチャンスだろう。
アリーズが思った通り、ダークはニヤリと得意げに笑って頷いた。
「よかろう。知ってから死ぬ方が、絶望も深くなるだろうからな。我の目的は、シムルグと対極のところにある。ゆえに我々は千年の長きにわたり戦い続けてきたのだ」
「シルの目的って、運命を人間の手に委ねること……だったよね?」
アリーズは一瞬だけ、視線を肩の上のシルに向ける。
「ああ。ボクは運命を人間の手に返したい。天界と魔界の人間界への干渉を止めたい。だからボクは人間に“力”を授けたんだ。自分の核を二つの神器に変えてね。とりわけ人間の中でも、闘争心を持たない性別と年代の者。武力による争いを望まない存在である――“少女”に託すと決めたんだ」
いつもの冷静な口調で、シルは語る。
神格であるシルの力は、“世界の法則”の制限を受けてなお、人間界に多大な影響を与え得る。正しく使えば悪魔から人間を守る力になるが、一つ間違えたら天界と魔界の介入を招くキッカケにもなりかねない。だからこそ力に呑まれないような、正のエネルギーに溢れた少女にしか使えないようにしたのだと――。
そんなシルの告白を聞いて、ダークは呆れた顔で小さくため息をついて見せた。
「シムルグ、お前こそ我をも上回る異端よ。その非合理な人間中心の考えは、天界の神の総意から外れておるのだ。まあ我がやろうとしていることも、魔界の神の総意から外れておるがな。我の目的は、人間の運命を管理して効率よく負のエネルギーを集めることにある」
「運命を管理って……」
「そんなことはボクがさせない! 人間の運命が、人間の心が、神々の思い通りになってたまるものか! 第一そんな身勝手は、天界はおろか魔界だって受け入れはしない!」
呆然とつぶやくアリーズの肩の上から飛び上がり、シルがいつになく感情を剥き出しにした激しい声で叫ぶ。
「……であろうな。だからこそ強硬手段に出たのだ。我が求めるのは絶対的な秩序と安定。そのために、我は人間界を足がかりにして、魔界と天界の全てを支配下に収めるのだ!」
ダークは、両手を大きく広げて雄弁に語る。よって東京都の壊滅は始まりに過ぎない。次に日本全土から、やがては全世界から、無限に負のエネルギーを集めるのだと。天界と魔界と人間界、その全てを捩じ伏せてでも――。
朗々としたダークの演説が終わるのを待たず、シルが鋭い声で叫んだ。
「それは矛盾している! 人間から効率よく負のエネルギーを集めたいなら、天界や魔界を巻き込んだ戦争で人間を死に追いやるのは本末転倒だろう?」
人間界は“世界の法則”によって守られている。人間界に直接影響を与えられるのは、法則の範囲内に在るものだけ。つまり、生物を含めた物質だけだ。だから天界や魔界の神々が力を行使すれば、それは“世界の法則”とのぶつかり合いになる。その結果として天変地異を引き起こすのだ。人間が滅びれば天界も魔界も滅びる。だから人間界には手を出さないのが、天界と魔界の暗黙の了解になっていた。
「問題ない。天界と魔界、そして人間界を制圧すれば、後のことはどうとでもなる。何なら一次的に人間を一割以下に減らしても構わん。人間も養殖とやらで、食糧となる生物を増やしているのであろう? それと同じように、人間もまた元通りに増やせばいいだけの話だ」
シルが全身の羽毛を逆立て、また何か言い返そうとするのを、アリーズが手のひらで嘴を塞ぐようにして止めた。もう――たくさんだと。
『Re:ターン・プリティスター(第40話)――スターアリーズの使命と若葉未幸の決断――』
「つまり、あなたは人間を食糧としか見てないってことだね。だったらわたしは人間として、プリティスターとして、あなたの野望を阻んでみせる!」
アリーズが両手を前に突き出して、合気構えを取る。戦闘の再開を感じ取って、シルはパッと後ろに下がった。
「愚か者め――お前たちは、すでに失敗しておるのだ!」
そう言いながら、ダークが右手に闇の魔剣を顕現させる。それを目にした途端、アリーズの肌がチリチリと粟立った。見た目はさっきと変わらないのに、ゾッとするほどに増した存在感。剣から発せられる魔力がまるで違うのだ。あれに触れてはならないと、アリーズの直感が警鐘を鳴らす。
アリーズはグッと奥歯を噛み締めて、右手で拳を握った。その右手に強大な気が集まっていく。ダークに視線を据えたまま、ゆっくりと拳を腰の後ろに下げる。空手の突きのような独特のモーションは、水鏡流の遠当ての未幸流アレンジだ。
ダークは闇の魔剣を構え、アリーズの技の発動と同時に飛び出した。
極大の気の塊が、彼女の拳から――天井に向けて放たれる。
「なにっ!」
ダークが虚を突かれた隙に、アリーズはその脇をすり抜けて、倒れているパンドーラの元へと走る。彼女を抱え、脱出しようと崩れた天井を見上げて――そこで初めてアリーズは驚きに目を見開いた。
「そんなっ! あれで壊れてないなんて……」
天井から、ポロポロと小さな石の欠片が落ちてくる。だが、それだけだった。アリーズの遠当ての直撃を受けても、天井はわずかに表面が剥がれたのみで、亀裂すら入っていない。
そう――さっき戦おうとしたのは、実はアリーズの演技だった。全てはここから脱出するための振りだったのだ。
ダークの言う通り、裏当てでダークの核を砕けなかった時点でこの計画は失敗している。その場合は、負のエネルギーの集積ポイントになっているこの部屋を破壊して、一旦出直す――これは事前に打ち合わせしておいた行動だった。シメールやラドゥやオルトスのことも心配だし、パンドーラの治療も急ぎたいから尚更だ。
目論見が外れて、アリーズは悔しそうに唇を噛む。
「言ったはずだ、今回は逃さんとな。この部屋には強力な防御魔法をかけてある。今のお前とて、力づくで壊すのは不可能だ」
アリーズはとっさに入り口の魔法障壁と、四方の壁にも遠当てを放つ。しかし気の練りが十分ではない遠当てでは、いずれも傷一つ付けることはできなかった。
「戦うしかないみたいだね……」
「さて、戦えるのか? お前に我の肉体を傷つける覚悟があるとも思えんが」
アリーズは倒れているパンドーラを庇うように構えを取ったが、ダークはもはやパンドーラなど眼中に無いようだった。人質なら自らの宿主――雫で間に合っているし、すでに腕輪も手に入れて、正面から戦ってもダークの方が圧倒的に戦闘力が高いのだから当然だろう。
ダークの身体は地面から少し浮いている。恐らく自由に飛ぶこともできるのだろう。パワーはもちろん、機動力もまるで違う。これでは丸腰の人間が、野生の虎と同じ檻に入れられているようなものだ。
「では、行くぞ」
踏み込みではなく、飛翔――今のアリーズの目でも追うのがやっとという俊敏な動きで、ダークが目の前に現れる。横凪に振るわれた剣を、アリーズは紙一重で躱した。
「ぐっ!」
斬られたアリーズの髪が宙に舞う。
「よくぞ避けた。だが、抗うほどに苦しみが増すだけだぞ?」
楽し気にそう言いながら、ダークは縦横無尽に剣戟を繰り出す。アリーズは死に物狂いでそれを避け続けた。ダークの剣は時折アリーズの衣装を掠めるものの、一向に肉体には届かない。
「こっちからも行くよッ!」
今度はアリーズが反撃に出る。水鏡流は当身技も多いが、その本質は活人術だ。相手に大きな怪我をさせない攻撃方法はいくらでもある。
アリーズの当身がダークの脇腹に命中する。だが、同時にガン! という衝撃がアリーズの拳に響いた。
「何なの? これ!」
アリーズの叫びに、ダークがニヤリと笑う。アリーズはとっさに後ろに跳び退って遠当てを放つ。ダークはそれをあえて、回避も防御も取らずに食らってみせた。
アリーズの気弾が、ダークの胸の前で四散する。
「何これ……効いてないんじゃなくて、当たってないの?」
驚き混乱するアリーズに、後方からシルの声が飛んだ。
「アリーズ! それはおそらく雫の――アクエリアスの固有技のオートバリアだ。雫の身体を乗っ取ったダークが使えてもおかしくはないが……」
「そういうことだ。もっとも、防御力はオリジナルとは比較にもならんがな。つまり、このバリアを破るほどの攻撃でなければ我には通らぬし、通るような攻撃なら、この娘を殺すことになるというわけだ」
再びアリーズは防戦一方に追い込まれる。ダークの力は魔力や防御力だけではなく、剣速も飛躍的に上がっていた。ダークスターと戦っていた時のダークの剣なら、アリーズは完全に躱せる自信があった。しかし、今は剣の動きが全く見えない。それでも致命傷を受けずに済んでいるのは、見えなくても読めているからだ。敵の心を自らの心に映し出す、水鏡流の明鏡止水の力だった。だが――。
「あっ、ぐっ……」
徐々にアリーズの表情が歪み、苦痛の呻き声が溢れ始める。スーパー・スターアリーズの身体能力と、ドリアードによる身体強化と、明鏡止水の技を総動員しての、本当にギリギリの戦いだった。ドリアード召喚の効果はまだ切れないが、痛みで集中を乱して明鏡止水が切れたら一巻の終わりだ。
「そろそろ楽になったらどうだ?」
そう言いながら一歩下がって勢いをつけたダークが、渾身の突きを繰り出す。その一撃を読んでいたアリーズは、とっさに頭を振って躱しつつダークの懐に飛び込んだ。
アリーズの耳が半分千切れて、草の葉のイヤリングが光の粒子となって消える。
“水鏡流合気柔術――裏伝! 裏当て!”
アリーズの拳がダークのバリアによって阻まれる。だがオートバリアの発生地点は、ダークの皮膚のわずか数ミリ上――。
「このくらいなら、水鏡流の裏当ては“徹る”よ!」
水鏡流の裏当ては、ほとんど同時に二度打ち込む技だ。一打目の衝撃と気の伝わり方で相手の急所を探り、一瞬後の二打目で相手の急所を打ち貫く。しかし、ダークに放った一打目の手応えに、アリーズは二打目を打つことができなくなった。
(そんな……核が無い? だって、さっきは――)
ほんの数分前に、ダークの核に裏当てを叩き込んだばかりだというのに――そう考えて、ふと気づく。ダークが今しがた、残りの半分の核も腕輪に変えていたことに。
(つまり、もう狙うべき核が無くなったということ? だとしたら、標的は心臓か、脳か――って、そんなこと、できるわけないじゃない……)
実際に迷ったのはせいぜい一秒か二秒ほどのこと。だが、ダークが反撃に出るには十分な時間だった。
裏当てを迷っている無防備なアリーズに、ダークは左手を向ける。その手のひらから生まれた暗黒の球体が、アリーズの全身を包み込んだ。
「しまった!」
アリーズはとっさに脱出しようとするが、内側から殴っても、気を放っても、球体の檻はびくともしない。
「終わりだ」
「アリーズっ!」
シルの悲鳴が響く中、ダークは左手をギュッと握る。球体は急速に小さくなって――ギリギリ人が入れるくらいのサイズで、その圧縮がピタリと止まった。
「な……にッ?」
固く握ったはずのダークの左手が、本人の意思に反してジワジワと開いていく。そしてダークの口から、今までとはまるで違う、柔らかな声が発せられた。
「……聞こえ……ますか?」
「雫……なのか?」
呆然とした声でシルがつぶやく。
――聞こえ……ますか?
球体の檻の中で、アリーズはとっさに膝を丸めて圧縮に耐えていた。だが、苦しかったのは一瞬のこと。暴力的な圧力はすぐに消えて、檻も元のサイズに戻る。それと同時に、檻のすぐ近くから声が聞こえてきた。
声自体はどこかで聞いたことのあるような、でもその優しい響きは初めて耳にするような、不思議な声が――。
「あなたは……誰?」
――私の名前は神代雫。スターアリーズ、あなたにお願いがあります。
「雫ちゃんなの? わたしは若葉未幸。って……もしかして、意識が戻ったの?」
――意識はずっとありました。今、私がどんな状態にあるのかも理解しています。魔神ダークの目的も聞いていました。時間が無いので聞いてください。ダークを倒す方法が一つだけあります。あなたの技で、核ではなく心臓を狙ってください。私という憑代を失えば、ダークはこの世界に留まれなくなります。
「ダメだよ! そんなことしたら雫ちゃんが死んじゃう! パンドーラが……七海ちゃんがどんな思いで、雫ちゃんを救おうとしてきたと思うの?」
――仮に助けてもらったところで、私はもう幾らも生きられません。せいぜい半日か、あるいは数時間か……そんなものなんです。助かったところで、またすぐに七海を悲しませてしまいます。だから――。
そこで雫の声は途切れた。
「待って、雫ちゃん! まだ話したいことが――!」
アリーズがそう声を上げるのと同時に、突如、彼女を閉じ込めていた暗黒の球体が消失した。
目の前のダークは、寂しげな微笑みを浮かべている。恐らく雫は最後の力で球体の檻を消し、アリーズのためにダークを抑え込んでいるのだろう。
今ならダークは無防備だ。確実に裏当てを決められる――。
アリーズはダークの腹部に拳をトンと当てる。もうオートバリアすら働いていなかった。
“水鏡流合気柔術――裏伝! 裏当て!”
一打目の後、アリーズは心臓の場所を正確に捉えて、二打目を放とうとする。しかし、そこでアリーズの動きがピタリと止まった。
(打たなきゃ……雫ちゃんが最後の力を振り絞って作ってくれた時間なんだから。打たなきゃ……きっとこんなチャンスは二度と無いんだから。打たなきゃ……ここでダークを倒せば、オルトスやシメールやラドゥ君だって助けに行けるんだから。打たなきゃ……全ての人間の運命がかかっているんだから。だけど――ッ!)
裏当ての体勢のまま、たっぷり十秒ほども悩んで、そして――。
アリーズの頬に、ツゥーっと一筋の涙が流れた。
(雫ちゃんの命を諦めろって言うの? たとえわずかな時間でも、七海ちゃんと一緒に過ごせるかもしれないのに。わたしは……どうしたらいいの……?)
――全てを護ってこそ水鏡流よ。――負けるでないぞ。
「師範……」
――テメエは何も間違っちゃいねえよ。だがな、本当に苦しい時くらい、助けてもらう側に回ったっていいんじゃねえのか?
「オルトス……」
――私は涙を止めたい。あの日をやり直すことはできなくても、再び繰り返すことを、防ぐことならできるはずだから。
「結衣ちゃん……」
(そうだったよね……ありがとう)
ダークの身体がピクリと動く。そして次の瞬間には、右手に闇の魔剣を顕現させ、アリーズを横薙ぎに斬りつけた。
しかし明鏡止水にあるアリーズは、ダークが覚醒すると同時にそれに気づき、後方に跳んで回避する。
ダークは荒い息を吐きながら、まさに鬼神の表情でアリーズを睨みつけた。恐らくダークにとっても、一時的であれ雫に身体の支配権を取り返されるなど、全くの予想外だったのだろう。
「はあ、はあ、はあ……。やはり神代の血は侮れんな。だが、お前の愚かさのお陰で助かったぞ……。お前は千載一遇の機会を棒に振ったのだ! もう二度と奇跡は起きん。我の本気で、塵一つ残さず葬ってくれる――後悔しながら死ね!」
その言葉はハッタリではなかった。それが証拠に、真っ黒なつむじ風が部屋の至る所で巻き起こり、目視できるほど大量の負のエネルギーが、ダークに向かって流れ始めたのだ。
それは、この部屋に常に注がれている、東京中から集められた負のエネルギー。ダークはそれを大量に取り込んで、戦闘力をさらに増大させていく。
暗黒のオーラが禍々しくダークの身体を包み、その手に握られた剣からもまた、まるでどす黒い炎のように瘴気が立ち昇っている。
だが、アリーズの表情にもう迷いは無かった。ますます強大になったダークを、毅然とした顔でまっすぐに見据える。
(雫ちゃんは今、自分は死ぬべきだと思ってる。それが正しいことなんだって諦めてる。そんな理不尽を許していいの? たった一人で死を待っている雫ちゃんのことを、わたしまで諦めてしまっていいの? それが正しい判断だとしても、そうするしかないんだとしても、そんな時にこそ『そんなことない!』って、『大丈夫だよ!』って、『必ず助けるから!』って、そう言ってあげるのが、プリティスターなんじゃないの?)
かつてジェミニに訴えた言葉を、アリーズはそのまま己の心に問いかける。
これが正しい判断だとは思わない。余命いくばくもないたった一人の少女のために、人間全ての運命を賭けようというのだ。しかも勝ち目なんて――全く見えないのに。
アリーズが、両手の拳を固く固く、ギュッと握り締める。
答えは――もう出ていた。
「合気とは、愛の力の元にして、万和合の力なり!」
迷いによって曇っていたアリーズの心が、青空のように澄み渡っていく。苦痛に感じていた超変身による反動も、ドリアードの圧力も、嘘のように消えていった。
この後に及んで、臆することなんて何もない。個人で扱うには大きすぎる、神にも迫る力ですらも、まるで足りないと思えた。もっと強い力を――全てを護り、全てを救う力を――腕輪に、そしてドリアードに願う。
「わたしは間違っているのかもしれない。だけど……これがわたしが目指したヒーローだから! 一生届かないとしても、あの背中を追い続けると誓ったから!」
「愚か者め――消え失せよ!」
ダークが低空を滑るように飛翔し、一気に間合いを詰めてくる。叩き込まれた渾身の一撃を、アリーズもまた、真っ向から迎え撃った。
「なん――だと!」
ダークが振りかぶった剣を袈裟斬りに振り下ろす。だがその半ばで剣の動きが止まった。ダークが剣を掴んでいる両手を、アリーズが両手で掴んで止めたのだ。
ダークが剣を振り下ろし、アリーズが剣を食い止める。純粋な力の勝負で、両者は拮抗していた。
「有り得ん! なぜ――我と互角の力を出せるのだ!」
そう叫んだ次の瞬間、ダークの身体が空中で一回転して地面に叩きつけられた。
“水鏡流合気柔術――表伝! 合気舞い!”
即座に起き上がったダークの目が、驚愕に大きく見開かれる。
「なんだ――それは!」
その視線の先にあるのは、合気構えを取っているアリーズの姿。だが、さっきとは容姿が違っている。その腰の辺りには、彼女の身体を水平に囲むように輝く大きな光の輪が出現していた。輪から聖気が迸り、キラキラとまばゆく煌めいて、アリーズの全身を覆っている。
そしてダークと同じように、アリーズの身体がフワリと地面から浮かび上がる。
「これが、本当のスーパー・スターアリーズの姿だよ。わたしの心の中の迷いが、星宝石に込められていた大勢の人の想いや、ドリアードの願いとの和合を妨げていたの」
穏やかな声でそう言いながら、アリーズが右手をまっすぐに上げた。
“水鏡流合気柔術――裏伝! 遠当て!”
轟音とともに、大量の瓦礫が頭上に降り注ぐ。軽く放った遠当ての一撃が、この部屋にかけられた防御魔法を打ち破ったのだ。
崩れ落ちる塔の中から、パンドーラを抱いたアリーズとシル、それにダークが脱出する。アリーズはパンドーラを瓦礫の上に降ろし、シルに預けた。
「アリーズ……勝算はあるのかい?」
「ごめんね、それが全く無いの。倒すわけにはいかないし、ダークと雫ちゃんを切り離すような技も、わたしは持ってない。だから――精一杯足掻いてくるね」
ニコリと笑ってそう言うと、アリーズはダークの待つ上空へと飛び立った。
地上の仲間を巻き込まないためだろう。アリーズはぐんぐんと高度を上げながら、ダークと激しい空中戦を繰り広げる。勇ましく飛び立ったところで、アリーズに打つ手はない。たとえ戦闘力で、アリーズがダークを上回っていたとしても――。
「ジェミニ……」
小さくなっていく二つの影を見上げながら、シルの口から失ったパートナーの名前が零れる。自分で選んだ道とは言え、無力な我が身が恨めしい。ここに彼女が居てくれたら――シルはそう願わずにはいられなかった。
蜘蛛型の悪魔が、八本の脚でラドゥを羽交締めにする。ラドゥの頭よりも大きな口が開き、尖った牙が頭蓋を噛み砕こうと迫る。だが次の瞬間、その口からけたたましい絶叫が迸った。
ラドゥの右手が蜘蛛の胴体を貫いて、背中から飛び出している。その手が引き抜かれると同時に、悪魔は黒い霧となって消えていった。
「はあ、はあ、はあ……うぐ――ッ!」
休む間もなく、今度は鷲型の悪魔が空から急降下してラドゥの背後に迫り、鋭い鉤爪で胴体を掴む。爪がめり込んでラドゥの身体から血が噴き出したが、ラドゥは背中に腕を回すと、その脚を力任せに引き抜いた。
「ラドゥ、前です!」
シメールの言葉に反応して、ラドゥはとっさに掴んでいる鷲型の悪魔の体を盾にする。同時に狼型の悪魔の放った炎のブレスが襲いかかった。
ブレスを吐き終えた狼型の悪魔の体が、すぐに黒い霧となって消え始める。その悪魔は完全に消え去るまで、自分がラドゥに頭部を潰されたのだと気づくことはなかった。
「助かったよ、シメー……」
ようやく顔を上げたラドゥの目が、驚愕に見開かれる。巨人型の悪魔の繰り出した槍が、シメールの腹部を貫いていた。
「この――ッ!」
ラドゥが駆け寄ってシメールの身体から槍を引き抜き、巨人型の悪魔に向かって投げつける。槍は悪魔の頭部を貫いて、巨人型の悪魔は黒い霧になって消えていった。
ラドゥは乱暴に自分の髪をむしり取ると、フッと息を吹きかける。髪は金色に発光して、たちまち三十体ほどの竜が顕現した。
竜たちはその体を盾にしてラドゥとシメールを護りながら、周囲の悪魔たちと交戦を始める。暗示による強化を施していないため、わずかな時間稼ぎにしかならない。だがそのわずかな時間が、今のラドゥにはどうしても必要だった。
ラドゥが急いで、シメールを助け起こす。
「シメール、大丈夫かい? なんて聞くのは野暮だね。そろそろお互い限界だよ。全滅する前に、さっきの考えってのを聞かせてくれないかな?」
アリーズたちと別れてから、まだ半時間も経ってない。しかし、もうシメールは戦える状態ではないし、ラドゥも今の召喚でほとんどの魔力を使い果たしてしまった。もう真竜のブレスすら撃てないだろう。
あれから二人で倒した最上位悪魔は、ざっと二百体ほど。恐るべき戦果ではあったが、まだ九千体以上の悪魔が無傷で残っている。
「ああ……そろそろ頃合いでしょうね。なに、簡単なことです。ラードーンの力を開放するのですよ」
シメールは口から大量の血を吐き出しながら、事もなげにそう言ってのけた。
「それは無理だよ。僕にはもう悪魔化するだけの魔力が残っていない。君も知ってるだろう?」
少し期待していただけに、がっかりした表情でラドゥが首を横に振る。
それに、仮にラードーンになれたとしても、それでこの数の悪魔をどうにかできるとは思えない。的が大きくなれば、それだけ一斉攻撃を受けやすくなる。たった二人でこれまで凌いでこられたのは、的が小さいが故に、常に少数と戦えたからなのだ。
「足りないならば、他所から持ってくればいいのです。私と融合して私の肉体を取り込めば、不足した魔力を補うことができるでしょう。百の首と二百の魔眼を持つ、不死身の竜ラードーン――どうです? 一万体の最上位悪魔が相手であっても、決して負けないとは思いませんか?」
思わぬ提案に、ラドゥが息を呑む。本来なら悪魔同士が融合することは無い。だが、シメールの悪魔であるキマイラは“合成”の特殊能力を持つ。他の悪魔の体を、その能力とともに己の体内に取り込んでしまうのだ。かつてシメールは、その能力でラードーンを取り込もうとして、逆に悪魔としての格の違いから体を乗っ取られかけたことがあった。
「シメール……自分が何を言ってるのか、わかっているの?」
「ええ、もちろんです。融合してしまえば私の人格は消滅しますし、ラドゥも二度と人間の姿には戻れなくなるでしょう。ですが、やらなければ――この数の悪魔が東京全域に雪崩れ込むことになるのですよ?」
シメールの魔眼ではない方の瞳が、真剣な色を帯びる。自分たちがここで敗れた後、ダークの使い魔である彼らが、今さらダークと交戦中のアリーズたちに牙を向けるとは思えない。であれば、次に彼らが取る行動は容易に予測できる。
天羽邸では、優斗と愛優がみんなの無事な帰りを待っているのだ。その姿を思い浮かべた途端、ラドゥの血走った眼差しが、ふっと穏やかになった。
「ああ……それは何としても止めないとね。いいよ、僕は十分に幸せだった」
「ええ、私も幸せでした。愚かなことです。失うことで人間の全てを憎んでしまうほどに……深く愛した女と巡り逢えた人生でした。命に代えても、守りたいと思える娘とも出逢えました。だから――私は人間を許しましょう!」
シメールは眼鏡を外し、それを高々と放り投げると、魔眼の真の力を解放する。
“シメールの名の元に、ここに真名を解き放つ! キマイラの魔眼よ! 暗黒の書、ゴエティアの理を示せ!”
シメールの深碧の瞳が一際強い光を放ち、ラドゥが食い入るようにその光を見つめる。シメールはありったけの魔力を暗示に変えて、魔眼でラドゥの力を引き出す。
「ここは西の果て、太陽が沈む国ヘスペリア。昼と夜の境目にある夕べの国。魔界の最奥にして死者の楽園なり。シメールの名において不眠の竜の王に告げる。女神ヘスペリスが育てた黄金の林檎が狙われた。憎き賊どもは汝の目の前にいる。疾く殲滅して楽園を守れ! 汝の名は守護竜――ラードーンなり!」
暗示が完成して、ラドゥの全身が竜の鱗に覆われていく。だが悪魔化がそこから先に進まない。ラドゥ自身の魔力が足りないのだ。
「うぐ――ッ!」
その時、周囲の竜の頭上を越えて、無数の矢が空から降り注いだ。鱗に覆われているラドゥは全て弾き返したが、シメールには数十本の矢が突き刺さる。
「シメール!」
「何……これは好都合。イービルリング無しで悪魔化するには、死の危機に瀕する必要があるのです」
生存本能を刺激されたシメールの中の悪魔が、その肉体を変質させていく。衣服は体内に取り込まれ、筋肉が隆起し、骨格が変化し、皮膚は硬質化して黒光りする体毛が全身を覆う。
太い四肢が地面を踏みしめると同時に、頭と胴体は猛々しき獅子の姿になる。大きく盛り上がった背中のコブからは二本の角が生えて山羊の頭となり、臀部から生えた尻尾は巨大な蛇となった。
幾つもの獣の遺伝子を持つと伝えられる、伝説の魔獣――キマイラ。それがシメールに憑りついている悪魔の姿。筋肉の塊のような体の全長は、五メートルを優に超える。
「行きますよ、ラドゥ」
「ああ。さようなら、シメール」
悪魔キマイラと化したシメールの獅子の口が、半端に悪魔化したラドゥを咥えて、ゴクリと飲み込んだ。
その途端、周囲の悪魔と比べて決して大きくはないキマイラの体が、メキメキと音を立てて巨大化し、変化していく。獅子と山羊の頭は体の中に埋没して、代わりに無数の竜の首が皮膚を突き破って伸びてくる。全身を覆った黒い毛は鱗に変化し、蛇の尻尾は三本に分かれて巨大な竜の尾となった。その間にも体の巨大化は止まらない。数体の竜と数十体にも及ぶ悪魔たちが、その膨張に次々と巻き込まれ、巨体に圧し潰されて消えて行った。
やがて魔界最強の悪魔が現界する。金色に輝く体躯と百の竜の首を持つ、全長百メートル、体重一千トンを超える、不死身の守護竜ラード―ンが。
だが、いまだ九千体を超える悪魔たちは、この異変に怯んだりはしなかった。
このサイズなら、むしろ大軍にとっては戦いやすい。まだ参戦していなかった遠方の悪魔たちが、包囲殲滅戦に動き出す。地上から、遊園地の遊具の上から、または上空から、悪魔たちが続々と押し寄せ、ラードーンを取り囲む。
悪魔たちが取った必勝のはずの陣形――それは自らの破滅を招く陣形であった。
ラードーンの百の首が、閉じていた目をパチリと開く。その瞳は全て碧色をしていた。
そして二百の魔眼が一斉に光を放つ。二百の邪視が飛ばしたのは、全て麻痺の暗示。飛んでいた悪魔は墜落し、遊具の上にいた悪魔は落下して、それぞれが地上の悪魔と激突する。
百の竜の首が、今度は大きく口を開く。口腔には小さな種火。それが見る見るうちに大きくなって、一斉に炎のブレスを解き放つ。
一瞬にして千体以上の悪魔が消滅する。百の首は休む間もなく、次の種火を口腔に宿す。
しかし、悪魔たちの対応もまた素早かった。魔眼の暗示を逃れた後方の悪魔たちが、今度は一斉に攻撃を開始する。ラードーンに炎や冷気や電撃を浴びせ、無数の矢を撃ちかける。
ラードーンの巨体の一部は焼かれ、抉られ、大きなダメージを受けた――かに思われた。
しかし、焼け落ちた首の代わりにすぐに新しい首が生え、肉体の損傷は瞬時に再生される。高位の悪魔の中には高い治癒力を持つ者も少なくないが、そんな次元ではなかった。ラードーン本来の力だけではない、キマイラの細胞増殖の能力。まるで映像の巻き戻しのような超回復に、悪魔たちの攻撃はあっさりと水泡に帰す。
再び炎のブレスが一斉に放たれ、また千体近くの悪魔が蒸発する。九千を超える悪魔の群れは、たちまち残り七千にまで数を減らした。
浮足立った悪魔たちが、我先にと逃げ出そうとする。しかし――体が動かない。悪魔たちは、すでに全員が魔眼の術中にあることを知る。
歯向かう者はおろか、動く者さえ誰もいない廃遊園地を、ラードーンは無人の野を行くがごとく地響きを立てて前進し、百の炎のブレスで辺りを焼け野原に変えていく。
その一方的な殺戮はもはや――戦闘と呼べるものではなかった。
「はあ、はあ、はあ……げぼっ……」
口から溢れ出た大量の血が、ベシャリと足元の地面を濡らす。すでに合気呼吸も途切れ、オルトスは防戦一方となっていた。
神格・八岐大蛇を相手に、それでも最初のうちは互角に戦えていたのだ。だが、身体強化の反動ダメージと、全身の切り傷による出血や疲労の蓄積により、長期戦になるにつれて次第に形勢が悪くなる。
「それ! 休んでいる暇はないぞ?」
少し離れたところから、八岐大蛇が剣を水平に振るった。
“秘剣――鎌鼬!”
剣に纏わせた気を飛ばす、水鏡流・遠当ての剣術版のような技。八岐大蛇はこの技を、遠距離攻撃のみならず、接近戦でもお構い無しに多用してくる。
オルトスが低く大きく真横に跳んでそれを避けた。屈んで躱すには軌道が低すぎるし、跳び越えて躱せば着地までに隙ができるからだ。だが、水平方向に広がる不可視の斬撃は避け切れず、オルトスの左腕が裂けて血がにじんだ。
“秘剣――旋風!”
息つく間もなく次の技が飛んでくる。これは鎌鼬と同質の不可視の斬撃を、同時に複数放つ上位技だ。これを八岐大蛇は、一度に八撃まで放つことができる。
縦横斜めに不規則に飛ぶ八つの斬撃が、空間制圧攻撃となって放たれる。逃げ場を失ったオルトスは、身体に気を纏わせて防御に切り替えた。しかし、跳ね返すには威力が大きすぎる。全身から大量の血を噴き出して、オルトスは前のめりに倒れた。
「立ち上がれぬか? ならば、もう楽にしてやろう」
「まだ終わっちゃいねえ……。ここから先には行かせねえ!」
呻くようにそう言いながら、オルトスは目の前に立つ八岐大蛇の足を掴んだ。
「その闘争心と精神力――つくづく殺すには惜しい男よな。余の配下に加わる気は無いか?」
「へっ、テメエの“剣”は技こそ冴えてるが、しょせんは弱肉強食の獣の牙よ。武としての研鑽がねえ、探究がねえ、思想がねえ、だから憧れねえ。死んでもゴメンだ!」
吐き捨てるようなオルトスの言葉で、八岐大蛇の表情がスッと冷たくなる。
「であれば致し方ない。一介の悪魔が一時でも神と渡り合ったのだ。誇りに思って消えるがいい」
八岐大蛇は一蹴りでオルトスの身体を裏返しにすると、その腹部に剣を突き立てた。オルトスは絶叫を上げて苦悶に喘ぐ。八岐大蛇の足を掴んでいた手を離し、少しでも出血を止めようと腹部を押さえる。
その様子を冷ややかに見つめてから、八岐大蛇はトドメとばかりに大きく剣を振り上げた。オルトスの首筋に、ゾクリと悪寒が走る。一振りで斬り飛ばすつもりなのだろう。
(ここまでか……。走馬灯は見えねえが、なんだか視界がヤケにぐるぐる廻ってやがる。まるで空が動いてるみてえだ――いや、動いてるのは地面の方か?)
八岐大蛇の剣が、オルトスの首に振り下ろされる。しかし、予想していた血飛沫は上がらず、生首も転がらなかった。八岐大蛇は信じられないものを見るような目で、立ち上がったオルトスを見つめる。
「驚いたぞ。まだ、そんな力を残していたとはな……」
驚いているのはオルトスも同じだった。さっきまで感じていた全身が焼けるような激痛も、地の底に引きずり込まれるような疲労感も、嘘のように消え失せている。何より――あれだけ大きく見えていた八岐大蛇が、何だかとても小さく感じられた。
(不思議な感覚だ。地面が動いてるのは、地球の自転って奴か? 上からでけえ力で引っ張られてるのは太陽の引力で、飛び出さねえように抑え込んでるのは地球の重力? 柔らかく身体を包んでいるのは気圧か? ふっ、なんだコイツは……。人間の社会に居場所がねえなんて、小せえことで悩んでた己が情けねえ。世界はこんなにも懸命に、俺たちを生かそうとしてるってのによ)
「さても不可思議なことよ。その青白い顔色は、失血死の前兆のはず。なぜその状態で動ける? 蝋燭は燃え尽きる前に一瞬だけ強く燃え上がるというが、それか?」
何か不気味なものを感じて、八岐大蛇は慎重に構えを取る。小さく見えていた目の前の男が、今はとてつもなく大きく見えた。
オルトスは八岐大蛇に目をやって、静かな声で問いかける。
「八岐大蛇、テメエに聞いておきたいことがある。俺を倒した後、テメエはどうするつもりだ? ダークの飼い犬になって、人間を殺すのか?」
八岐大蛇は、はたと首を傾げる。これからどうするのか――そんなことは、数千年前に暴れていた頃からちゃんと考えたことが無かったからだ。
「そうだな……。ダークに仕えるつもりは無いが、奴もそれは要求すまい。神の在り方とはそういうものだ。人間は、男は殺して女は食らう。あの柔らかい肉が好みなのでな。なに、必要以上に殺しはせぬ。満たされるだけ食って、酔いが回るまで酒を飲んで、目が覚めるまで寝る。生きるとは、そういうものであろう?」
八岐大蛇は己の回答に満足して、再び剣を構える。彼は天界や魔界の勢力争いに興味はない。ただ気に入らぬ者は斬り伏せ、気に入った者は従え、美しい女は食らい、美味そうな酒は浴びるように飲む。それは場所がどこで相手が何者であっても変わらない。だから頂点たる神の格が必要だったのだ。その自由を貫くために――。
オルトスもまた、八岐大蛇の答えに満足する。それは、以前の彼には理解できる生き方であったから。同時に、今の彼には容認できる生き方ではなかった。
「かつての俺は、この世界を滅ぼしてやろうと思っていた。いや、今でも俺を切り捨てた人間どものことは気に食わねえ。けどな。アイツがこの先も笑って生きていくために、この世界が必要だって言うんならしょうがねえ。だからテメエと俺とは相容れねえ! この命に代えても、今ここで――俺はテメエを討つ!」
「よかろう。余も次の一太刀にて貴様の命を断つ!」
“秘剣――旋風!”
不可視の八つの斬撃が再びオルトスを襲う。しかし――その狙いは目眩し。八岐大蛇は自らが放った斬撃を追いかけるかのように、オルトスの懐深くに飛び込む。
“秘剣――天つ風!”
頭上に高々と振りかぶった剣が、雷光のような速度で振り下ろされる。それと同時に膨大な気の奔流が、鋭い刃となって全方位からなだれ込み、対象ごと地面を大きく抉り取る。
八岐大蛇の切り札に位置する、絶技中の絶技の一つ。しかし――。
「はて……」
一瞬のうちに生まれた、直径十メートルにも及ぶクレーターのような地面の窪み。その中心に立って、八岐大蛇は眉をひそめる。
絶対の勝利を確信して放った一撃に、手応えがない。それどころか、オルトスの姿がどこにもない。すると、辺りを見回す八岐大蛇の背後から――いや後方のかなり高い場所から、楽しげなつぶやきが聞こえてきた。
「確か“円転の理”つったな? じじいでようやく届くかどうかって境地に、俺ごときが至ったとは思えねえが――死を前に一時だけ垣間見えたってとこか」
振り返った八岐大蛇の目に飛び込んできたのは、窪みの上から悠々とこちらを見下ろすオルトスの姿だった。
「貴様……今、何をした? 答えよ――ッ!」
「きっとこれが明鏡止水……なんだろうよ、本物のな。詠唱を必要としない、完成形の水鏡流の奥伝、奥の一よ!」
「答えになっておらぬ! なぜ余の剣を躱すことができたか聞いておるのだ!」
八岐大蛇は窪みから一気に跳び上がって、オルトスの正面に立つ。オルトスもまた、手を伸ばせば届くほどの距離から八岐大蛇を睨みつけた。
「まだわからねえのか? 今テメエが相手にしているのは、人間でもなければ悪魔でもねえ。俺から繋がる地球そのもの。いや、この宇宙――この世界そのものよ。どれだけ自分がちっぽけな存在なのか、思い知ってからくたばりやがれ!」
「とうとう気が狂ったか。ならば問答無用ッ!」
“秘剣――疾風!”
これは剣技ではなくて加速の技。八岐大蛇が一気に踏み込んで、一息に八連の斬撃を叩き込む。状況に応じて踏み込みを変え、軌道を変え、狙いを変えた、全てにおいて必殺の太刀筋だった。
しかしそれが、オルトスには掠りもしない。まるで殺陣の稽古でもしているかのように、絶妙のタイミングで剣戟を避け続ける。それは明らかに、次の剣がどこに来るかをわかっている動きだった。
「なぜだ! なぜ余の攻撃をことごとく避けられるのだッ!」
「丸見えだからよ。テメエの殺気がタイミングを伝えてくれる。地面の振動が接近を伝えてくれる。空気の動きが剣筋を伝えてくれる。気の流れが次の動きを伝えてくれる。悪魔だろうが神だろうが、そこに在るならば世界の一部。よって俺の一部に過ぎねえ!」
オルトスが両拳を地面に叩き付ける。
「それは何の真似……があああぁぁ――ッ!」
“水鏡流合気柔術――裏伝! 浸透牙!”
「地面を伝って、気の牙をテメエに打ち込ませてもらったのよ。もう逃げ場はどこにもねえ!」
形勢が一気に逆転する。オルトスが猛攻撃を仕掛け、八岐大蛇は防戦一方となる。何しろこちらの攻撃が当たらない上に、相手の攻撃はどこからでも飛んでくるのだ。
「おのれ! おのれ! おのれえぇぇ――ッ」
八岐大蛇は苛立たし気にそう叫ぶと、いきなり手に持った雨叢雲剣を自分の胸に突き立てた。そのままズブズブと、柄まで完全に体内に埋め込む。
その直後に異変が起きる。八岐大蛇の体がボコボコと膨れあがって、見る見るうちに巨大化し始めたのだ。顔は隆起した筋肉の中に埋もれ、長い髪は八本の巨大な蛇の頭と化す。やがて全長二百メートルを超える神獣――その名の通り八つの頭を持つ大蛇の姿となった八岐大蛇が、はるか上空からオルトスを見下ろした。
並んで比較すれば、悪魔化したラードーンですら小さく見えるだろう。しかも、ただ大きいだけではない。禍々しくも美しく、恐ろしくも惹きつけられるその姿は、神と祀られるに相応しい、高位の存在であることを感じさせる。
「これが余の真の姿。もはや貴様の攻撃など、一切通じぬと思え!」
「小せえな……いくら巨大化したところで、この星と比べたらテメエなんぞ芥子粒以下よ」
人智を超えた強大な力の化身。全身を視界に入れることすら敵わない巨大な神獣を前に、オルトスは不敵に笑う。
“ヒュウウウ――コォオオオ――ッ”
内気呼吸と外気呼吸を循環し、合わせて気を練る合気呼吸――水鏡流の奥伝、奥の二にして、オルトスが最初に伝授された絶技。それを今、天文学的な規模で行使する。
己に繋がるこの星の気を取り込み、己の発する気をこの星に返す。そうすることで己はこの星と一つになり、この星の力が己の力となっていく――。
真の明鏡止水を発現し、その先にある円転の理に至る。水鏡合気柔術の、究極の理想である宇宙との和合。そんなとてつもない力を身に纏いながらも、オルトスの脳裏に浮かんだのは、一人のしわがれた男の顔だった。
――お前さんが生きて戻ったら、たらふくの饅頭と看板をくれてやるわい。
それは、別れ際に冗談めかしてそんなことを言った、水鏡流当主の不破一真の顔だ。
(悪いな……じじい。やっぱり俺は、水鏡流の次期当主なんて柄じゃねえ)
だから最期に、この言葉を口にしよう――。
オルトスが、強大な敵を目の前にしているとは思えないほど晴れ晴れとした笑顔で、凛とした声を響かせる。
「合気とは、愛の力の元にして、万和合の力なり! 水鏡流合気柔術、オルトス――参る!」
八岐大蛇の八つの首が、競うようにオルトスを飲み込まんと迫って来る。
オルトスは全ての首を避けて敵の懐に飛び込み、巨大な胴体に右手をトンと当てた。
“水鏡流合気柔術――奥伝! 合気呼吸が無限の段!”
「――行くぜッ!」
“水鏡流合気柔術――裏伝! 裏当て!”
一瞬の後、八岐大蛇は大きく身体を震わせて、やがて黒い霧となって消えて行った。
そして濃厚な霧が晴れた後には、刀身にヒビの入った雨叢雲剣が、まるで墓標のように地面に突き立っていた。
中央広場に一人残されたオルトスが、石造りの塔を見上げてニヤリと笑う。
「へっ、まあ……悪くねえ――人生だったな……」
オルトスの目から、鼻から、口から、そして全身の無数の傷から、大量の血が一気に吹き出す。見る見る広がる血の海の中へ、オルトスはドサリと前のめりに倒れた。
地上からおよそ三百メートルの上空で、魔神ダークとスーパー・スターアリーズは激しい空中戦を繰り広げていた。
ダークの身体を囲むリボンに沿って、二十を超える魔力球が宙に浮かぶ。ダークが右手を突き出すと、それらは一斉にアリーズ目掛けて飛んだ。
「何度来たって同じだよっ!」
“水鏡流合気柔術――表伝! 合気舞い!”
アリーズは魔力球をことごとく弾き飛ばすと、そのまま流れるような動きで反撃に転じる。
“水鏡流合気柔術――裏伝! 遠当て!”
お返しとばかりに、アリーズが一気に十発の気弾をダークに放つ。
「おのれっ!」
ダークは避けられないと判断して、腕を交差して防御姿勢を取る。
しかしアリーズの強力な遠当ては、一撃でバリアを破壊する。それも一箇所ではない。頭の先から足の先まで、気弾は分散してダークの身体のあらゆる箇所に激突する。
全身のバリアを一瞬で砕かれたダークは、しかし直ちにバリアを復元する。そして再び魔力球を放った。
アリーズは右手の合気舞いで大量の魔力球を弾くと、直感で左手を真横に突き出して遠当てを放った。瞬時に回り込んでいたダークの闇の魔剣が、それを真っ二つに叩き斬る。
ダークの神速の剣閃がアリーズを襲い、アリーズの神速の当身がダークを打つ。百の剣戟に対しては百の当身。目にも止まらぬ攻防のたびに、ダークのバリアは砕け散り、稀にアリーズの身体から光の粒子が飛び散る。
被弾は圧倒的にダークが多く、アリーズはたまに掠る程度。空中戦の主導権を握っているのはアリーズだった。
完全なる現界を果たし、真の力を開放したにもかかわらず、戦いにおいて優位に立てない。それが神格たるダークのプライドを傷つける。
もっと有利な戦い方はあった。地上のパンドーラを人質に脅してもいいし、時間稼ぎをして召喚技の効果切れを狙ってもいい。だが、そんな姑息な戦い方は、己の力がアリーズに劣っていると認めるに等しい。
「これで消えるがいい――ッ!」
ダークの周囲に、これまでとは比較にもならない数の魔力球が浮かぶ。ダークは両手を突き出して、二百の魔力球を一斉に打ち出した。
“水鏡流合気柔術――表伝! 合気舞い!”
「捌ききった――よ?」
全ての魔力球を弾いたアリーズは、即座に遠当てによる反撃を行う。数はやはり十発で、狙いは同じく全身だった。
ダークのバリアが跡形もなく砕け散り、直後にダークが復元させる。
「なるほどな。バリアを破る程度の攻撃しかできないのかと思ったが、あえてバリアを破る程度に力を抑えているというわけか?」
ダークの指摘に、アリーズが表情を強張らせる。
「やはりお前は、我を傷つけることができないのだな? たとえ我の動きを封じるための、加減した攻撃であってもだ!」
「そうだよ。これ以上、雫ちゃんには何の犠牲も払わせない」
「お前の狙いは消耗戦に持ち込んで、我を疲弊させた後、あの娘の人格をもう一度引き出すことにある。あの部屋を破壊したのも回復を防ぐため。大方、また星宝石を貯めて、その願いで我と娘を分離させるつもりなのだろう?」
アリーズは答えない。しかし、その沈黙が何よりの肯定でもあった。
「ならば絶望を与えてやろう。邪宝石開放――我の魔力を回復させよ!」
ダークの身体が一瞬、赤色に染まって、次の瞬間には戦闘前のような力強いオーラに包まれた。
「そんな……」
ショックで蒼白になるアリーズを見て、ダークはようやくプライドと余裕を取り戻す。
「いい顔だな。ならばさらに大きな絶望をくれてやろう。邪宝石開放――我の身体能力を向上させよ!」
ダークの身体が一瞬、緑色に染まる。次の瞬間に姿を消したかと思うと、ダークは瞬時にアリーズの目の前に現れた。
「あぐっ――ッ!」
ダークの闇の魔剣がアリーズの左腕を深々と斬り裂く。続く斬撃はギリギリで回避して、アリーズは何とか距離を取る。
「動きが――まるで違う……」
「当然だ。消耗したのはお前も同じ。そして我は、全快した上に強化したのだからな」
戦闘が再開される。しかし、戦いの主導権はすっかりダークに移っていた。アリーズは守勢に回りつつも、先ほどの不意打ち以降は大きなダメージを受けず、ダークの攻撃を全て捌いていく。
しかし、戦闘力には埋められない開きができていた。しかもアリーズの狙いはダークに看破されているのだ。今度こそ本当に打つ手がない。
そして、ついに召喚技の効果時間が切れる。アリーズと融合していたドリアードが天界に還り、アリーズの身体がガクンと重くなる。
「召喚も切れたか? 万策尽きたな、アリーズよ。お前は確かに強かったが、心が弱かった。己の甘さを後悔しながら死ね!」
「後悔なんてしない――わたしは最後まで諦めない!」
勝ち誇ったダークの叫びとともに、百を超える魔力球がアリーズを襲う。そのほとんどを合気舞いで弾いたものの、それでも幾つかの魔力球に被弾してしまった。
「きゃあああ――ッ!」
「終わりだ!」
ダークの剣が横薙ぎに振るわれ、アリーズの首に迫る。その時だった!
ダークがとっさに攻撃を中断して、大きく後方に飛ぶ。同時に一瞬前までダークがいた空間を、巨大な炎が薙ぎ払った。
「何が起きたのだ!」
炎が消えると同時に、アリーズの姿も消失していた。すっかり混乱して辺りを見回したダークが、不意にゾクリと寒気を感じて頭上を見上げる。
「なんだ、これは……」
ダークの視界いっぱいに、灼熱の炎が広がる。その正体は、全長五十メートルにも及ぶ天界の炎鳥フェニックス。
その優雅な羽ばたきによって、周囲一帯に熱風が吹き荒れる。同時に突き刺さるような視線を感じて、ダークが身震いする。視線の主にして、炎鳥をも凌駕する強大な聖気を放つのは、その背中に乗る一人の少女だった。
スターアリーズを横抱きにして、凛とした表情でダークを見下す、見たこともない姿のプリティスター。
「まさか……お前は――!」
それは、相反する魅力を調和させた美の化身。
可憐にして豪華で、繊細にして力強く、慎ましくも派手やかなる存在。
柔らかな純白のドレスを、アシンメトリーの意匠が彩る。右側は蝶を想起させる紫の斑ら模様の裾飾り。左側は花を連想させるピンクのフリル。フレア状のスカートの内側は、煌めく星々の輝きを宿す。
頭部には大きな赤いリボン。額には金色に輝くティアラ。髪は薄紫のロングヘアが、緩やかなウェーブを描いて膝元まで伸びる。
そして腰の辺りには、アリーズと同じく身体を水平に囲むように大きな光の輪が出現し、そこから迸った聖気がその全身を覆っている。
「結衣ちゃん……?」
アリーズは何が起きたかもわからないまま、自分を抱いている少女に問いかける。少女はにっこりと笑って頷いて見せた。
「待たせてごめんなさい、未幸さん。もう大丈夫よ」
アリーズの両目に涙が溢れ、ボロボロととめどなく零れ落ちる。アリーズは目の前の細い首に両手を回して、夢じゃないことを確かめるように、力いっぱいに抱きついた。
「生きて――いたのか……?」
驚きに目をいっぱいに見開き、ダークは震える声でつぶやく。
「ええ、帰ってきたのよ。みんなの涙を止めるために。私はあなたを滅ぼして、雫さんを取り戻す。覚悟しなさい、魔神ダーク。あなたの野望は――決して叶わない!」
主の命を受けて、フェニックスは巨大な翼を力強く羽ばたかせた。
『Re:ターン・プリティスター(第39話)――二柱の神と終焉の軍勢――』
2022-12-25

静まり返った東京の上空を、竜の大群が進軍する。三日前と同じ光景だが、先頭の竜の上に居る戦士たちの顔ぶれは少し違っていた。
新たにここに加わったのが、オルトスとダークスター。そしてここに居ないのが、スタージェミニこと天羽結衣――。
向かう先はこの前と同じく、ダークの居城である廃遊園地。だが、目的地までまだ十キロもあるところで、未幸が不意に口元を押さえた。
「ねえ、シル。この辺りの瘴気……いくら何でも強すぎない?」
未幸は腕輪によって瘴気から護られており、これまで一度だって体調に影響が出たことはなかった。それが今、軽い吐き気を覚えている。
「ああ……しかも発生源はボクらが向かっているあの遊園地だ。これだけ離れていてこの濃度となると――最悪のケースも考えられるね」
「最悪のケースって、ダークが完全覚醒してるってこと?」
そう問いかけてから、未幸が心配そうな顔でシルの顔を覗き込む。ダークの覚醒は最悪とはいえ想定内。それにしては、いつも冷静なシルの口調がずいぶん強張っているように聞こえたからだ。
「いや、それだけではこの瘴気の強さは説明できない。ひょっとすると、魔界の神々が介入してきたのかもしれない」
シルはとんでもないことを口にして、小さな体をブルッと震わせる。
「それって!」
「ああ。もしそうだとしたら、もはやボクらの手には負えない。天界も黙ってはいないだろうから、全面戦争もあり得るね。人類存亡の危機と言っていい……」
もしも魔界の神々が、ダークに便乗しようと人間界に乗り込んできたのだとしたら、さすがに天界も黙ってはいないだろう。神格同士の戦いは、大地震や大洪水といった天変地異を引き起こす。ましてや両陣営の全面対決ともなれば――。
シルの言葉を聞いて、ラドゥ、オルトス、シメール、それにダークスターの顔にも緊張が走る。その沈黙を破ったのは、未幸の力強い声だった。
「大丈夫! それを止めるためのプリティスターでしょ? それに、これはわたしの勘だけど――まだそこまでの事態じゃない気がするんだ。きっと間に合うよ」
「そこまで言いきって、根拠が勘とは未幸お姉ちゃんらしいね。だけど僕は信じるよ。そして、必ず間に合わせる!」
ラドゥがそう言った途端、竜のスピードがぐんと上がった。
目的地まであと一キロを切ったところで、未幸が右手首の腕輪を左手で握り、竜の背の中央に立つ。その四方を、オルトス、ラドゥ、シメール、ダークスターが固めた。ギリギリまでダークにこちらの手の内を明かさないように、ここに来るまで腕輪の願いを温存していたのだ。未幸は仲間たち一人一人に小さく頷いてから、腕輪を胸に当てて力強く叫んだ。
「“煌めく星々の円環”よ。契約者たる若葉未幸がここに願う! この世界に生きる全てのものを守るため、魔神ダークに対抗できる力をわたしに授けて! スターアリーズに新たなる力を!」
未幸の言葉が終わった次の瞬間、腕輪が眩い光を放った。同時に、腕輪に宿っていた全ての星宝石が消失する。
「ありがとう」
未幸は腕輪に感謝の言葉を伝えると、続いて変身のキーワードを唱える。
“サークル・オブ・スターズ! メイク・オーヴァー!”
これまでの変身とはまるで違う、星の爆発のような凄まじい閃光が腕輪から放たれた。
未幸の全身に、激しい痛みを伴う熱が走り抜ける。まるで身体中の細胞が焼かれ、新しく作り直されるかのように――。そして光と熱とが収まった後には、かつての面影を残しながらも、新たなるフォルムに生まれ変わったスターアリーズの姿があった。
『Re:ターン・プリティスター(第39話)――二柱の神と終焉の軍勢――』
まるで蕾が花を咲かせたように、より優雅に、より華やかに、より美しく――。
オレンジ色のスカートを純白のロングテールドレスが包み、大きく広がったフレアスカートの内側は水色に彩られ、大空の明るい煌めきを宿す。
水色のリボンをつけたライトブラウンのサイドポニーの髪は、足元に届くほど豊かに伸びる。
太陽の光の象徴たる新芽の額冠も開花して、金色に輝く花々が連なる額冠となった。
「これがスターアリーズの最終フォーム。名付けて――スーパー・スターアリーズ!」
アリーズは新しい身体を確かめるように、興奮した表情で手のひらを握ったり開いたりを繰り返す。
「ふん。貴様のネーミングセンスはともかく、この私にも比肩するほどの強大な力を感じるぞ。これならダークとて恐れるに足らん」
満足そうにつぶやいたダークスターに、シメールとラドゥが揃ってツッコミを入れる。
「名前については同感ですが……“比肩”という言葉の意味をご存じですか? この力――あなたよりも遥かに上だと思いますが」
「うん、僕もそう思うよ。ネーミングについては、パンドーラに同意するけどね」
「だって一際輝くスターのことを、スーパースターって言うでしょ? わたしはカッコいいと思うけどなぁ……」
アリーズは戦闘力のことよりも、全員にネーミングセンスを突っ込まれて不満そうに口を尖らせた。そんなアリーズに、シルが冷静な声をかける。
「アリーズ、それにみんなも聞いてくれ。神格の力を甘く見るのは危険だ。今の願いだって“抗える力”を望んだから叶ったんだ。“倒せる力”を望めば叶わなかっただろう。この前のダークは、あれでも本来の力の一割も出せてはいなかったんだ。それに、待っているのがダークだけとは思えない……」
「大丈夫。ちゃんとわかってるよ、シル」
アリーズは手を伸ばして、肩の上で震えているシルを手のひらの上に乗せると、安心させるように語りかける。
「これだけの準備をしても、この戦いが命をかけたものになることに変わりはないって。わたしたちはこの前の敗北を乗り越えて、覚悟してこの戦いに臨んでるの。決して油断はしないし、何があっても絶望もしないから。ね? みんな」
アリーズの言葉に、その場にいる全員が思い思いの態度で賛同の意を示す。その時、前方に目を移したラドゥが警告を発した。
「そろそろ目的地上空だ。正体不明の敵が多数――来るよ!」
その直後、地上から一斉に炎や電撃や冷気の魔法が飛んできた。何体かの竜が、それらの攻撃を受けて墜落する。竜たちは即座に陣形を組み替え、戦士の一行が乗っている竜を守る態勢に入った。
「ラドゥ君!」
「大丈夫、やられてばかりじゃないさ!」
九十体ほどに数を減らした強化竜が、一斉に炎のブレスの発射準備に入る。同時にラドゥも両手を地上に向けた。組織化された見事な動きで、竜たちの飛行編成が変わっていく。発射のタイミングに合わせて、ラドゥの真竜のブレスの射線が開いた。
「夢幻のラドゥの名において、我が眷属たちに命ずる。最大火力をもって――地上の敵を焼き払え!」
竜の炎が視界を覆い尽くす。広範囲に渡って爆炎流が地表を焼き払い、そこに居た悪魔の軍勢を蒸発させた。一瞬で数百体の敵を一掃したわけだが、ラドゥの表情は晴れない。
「駄目だ。いったいなんて数だ……。これでもまるで減ってない。すぐに第二波が来るよ! 空を飛んでいたら的になるから、このまま地上に突っ込む!」
再び地上から、複数の属性魔法や特殊能力による対空砲火が放たれる。それより早く、竜たちはすぐに先ほどの防御陣形に切り替えて、何層にも渡って地上からの射線を塞いだ。
「構うな――体当たりで道を開け!」
着地しようにも、遊園地の広大な敷地内には謎の軍勢がひしめき合っている。炎のブレスで焼き払ったばかりの空間も、たちまち押し寄せた敵で埋め尽くされる。数を八十弱に減らした強化竜たちは、飛行慣性を使った体当たりで敵を薙ぎ払って地面に降り立った。
スーパー・スターアリーズを中心に、ダークスター、オルトス、ラドゥ、シメールが構えを取る。その外側には、彼らを守るように強化竜が円陣を形作る。無数の敵の軍勢が、四方八方から押し寄せて来た。すでに竜たちは、炎を吐き、爪や尾を振るい、襲い掛かる数多の敵と激しい戦いを繰り広げている。
“水鏡流合気柔術――裏伝! 遠当て!”
アリーズが、竜たちの隙間から遠当てを放つ。軽く放ったその一撃は、その射線上に居た敵を根こそぎ消滅させ、まるでそこだけ刷毛で掃いたような一筋の道を作った。とんでもない威力だが、それも束の間、道は周りに居る無数の敵たちに塞がれて、たちまち跡形もなくなってしまう。
「こいつらは何なの?」
「信じられないことですが、魔界の最上位悪魔の群れのようです。奴ら一体一体が、七十二柱と同等の力を持つということになります」
すぐさま次の遠当てを放ってから問いかけたアリーズに、魔眼の力を解放し、敵の能力を解析したシメールが重々しく答える。
「七十二柱と同等って……。でも凄い数だよ? 見た感じ、百や二百じゃなさそうだけど……」
「一万と十三体だよ、アリーズ」
首を傾げるアリーズに、シルが恐ろしい数を告げる。この遊園地跡の敷地面積は、東京ドーム八個分にも相当するというが、シルが言うにはその全域が、悪魔の群れで埋め尽くされているらしい。
「だとすると魔界の最上位悪魔の総数の、およそ半数近くということになりますね……」
シメールが、シルの言葉を受けてそう補足した。彼はダークハウルの前の組織の生き残りであり、魔界に最も詳しいのだ。そう言いながら、シメールはラドゥが追加で召喚した竜たちを、片っ端から魔眼で強化していく。
「やはり魔界が介入してきたのか?」
竜の隙間を縫って飛来してきた矢を次々とリボンで切り払いながら、ダークスターが問いかける。それに答えたのはラドゥだった。
「いや、そうじゃないと思うよ。数は多いけど、こいつらはまるで統率が取れてない。ダークがあり余る負のエネルギーを使って、手当たり次第に呼び出した悪魔たちだろうね」
個々で強力ではあっても軍隊ではない――指揮能力に長けたラドゥはそう言っているのだ。
「勝てる……かな?」
「馬鹿か! ダークの罠に自分から飛び込むつもりか?」
アリーズの問いに、同じく遠当てを放ちながらそう吐き捨てたのはオルトスだった。
「テメエは対ダークの切り札だ。そいつを先に切らせるための悪魔の軍勢だろうが!」
「同感だな。私とお前が居れば全て倒すことはできるだろうが――ダークとの決戦において致命的な消耗となる」
ダークスターも苦々しい表情で頷いた。さっき願いを叶えたばかりのアリーズの腕輪は空っぽで、星宝石は一つも無い。ダークに裏当てを決めて雫を解放するまで、スーパー・スターアリーズの本気を見せることも、消耗して本気を出せなくなることも、どちらも避けなければならない。
「ぐずぐずしている暇はねえ。どうにかして奴らの目を眩ませる手はねえのか!」
「一つ考えがあります。今から私とラドゥで彼らの注意を引きつけます。その隙に、アリーズとパンドーラとオルトスは、魔法で姿を隠してダークの居る塔の中に進んでください」
竜の強化を済ませ、一通りの自己暗示を掛け直したシメールが、淡々と提案する。
「駄目だよ! この前とは状況が違う。いくらシメールとラドゥでも、こんなめちゃくちゃな数を二人で相手にしたら……」
顔色を変えて反対するアリーズに、シメールは小さく笑って首を横に振った。
「もうそんなことを言ってる場合ではないのですよ。魔界の戦力の大半が人間界に来ている時点で、天界が黙認できるラインをとっくに超えているはずです。速やかに事態を収拾しなければ、最悪、東京が海の底に沈むことになります」
そうですよね? とシメールが確認するようにシルに視線を向ける。シルも黙って頷いた。
「でも、二人が死んじゃうのは嫌だよ……」
「そこはご心配なく。私に考えがあると言ったはずです」
「確かに迷っている暇は無さそうだ。僕はシメールの案に乗るよ」
ラドゥが真竜のブレスを放ってから、疲れた顔で汗を拭って言う。戦いながら三十体ほど追加したにもかかわらず、もう竜の数は五十体にまで減っていた。一万もの最上位悪魔の群勢を、竜たちは一行の盾となって食い止めてきたのだ。これでも十分に健闘していると言ってよかった。対して敵の数はいくらも減っていない。どの道、このままではジリ貧だった。
「アリーズ、パンドーラ、ここは僕たちに任せて先に行って! オルトス、二人のことを頼んだよ」
「わかった。なるべく早く終わらせるから!」
アリーズは泣きそうな顔で、ダークスターとオルトスは無表情で頷いた。
シルが認識阻害及び、聖気と瘴気、気配遮断の魔法をそれぞれ三人にかける。
「我々も動くとしましょうか。ラドゥ、竜の咆哮を使って催眠術をかけます。残存する全ての竜から出力させる――できますね?」
「できるけど、敵も最上位悪魔なんだ。難しい暗示はかからないと思うよ?」
「なあに、簡単です。挑発するだけですから」
シメールはニタリと笑うと、ラドゥの背中に右手を当てた。
“ゴオオオオオオオオオォォ――ッ”
五十体もの竜の咆哮。耳をつんざくような轟音が辺り一帯に響き渡る。
竜の咆哮はそれ自体が魔力を持ち、格下の悪魔の戦意を挫くという。もっとも敵の軍勢は全てが最上位悪魔で、強化竜よりも格上の存在だ。萎縮させる効果は働かない。しかし、竜の咆哮の魔力に乗せたシメールの音波催眠が効果を発揮する。
その暗示とは、意外にも“戦意向上”だった。敵の意思に背く暗示は通りにくいが、その意思を増幅させるのは容易い。そして眼前の敵への戦意が増した分だけ、周辺への注意はおろそかになる。
シメールの暗示で士気の上がった悪魔たちは、犠牲も顧みずに突撃を敢行する。その隙を縫って、アリーズ、ダークスター、オルトス、シルは静かに行動を開始した。
「引きつけるのに成功したのはいいけど、敵は前よりも強くなっちゃったよ? 考えがあるって言ってたけど、それに期待していいの?」
敵の攻撃の勢いが強まり、さらにはアリーズたちの援護も失って、残りの竜たちも次々と数を減らしていく。ラドゥはシメールに軽い口調で語りかけるが、決壊の時は間近に迫っていた。
「もちろんです。私のことが信じられないのですか?」
「悪いけど、シメールを信じられると思ったことは一度もないよ」
「それは賢明というものです」
軽口を叩き合いながらも、二人は竜の壁を抜けてきた悪魔たちをそれぞれ一撃で葬る。なんのかんの言っても、この二人は最後までダークハウルに留まったコンビでもあった。
やがて最後の竜が倒される。シメールとラドゥは互いに背中を預けると、いまだに一万近くいる最上位悪魔の群れを、たった二人で迎え撃った。
スーパー・スターアリーズ、ダークスター、オルトス、シルの三人と一羽は、悪魔の軍勢の目をすり抜けて、西洋風の石造りの塔の前にたどり着いた。中央広場のど真ん中に高々と聳え立つ建築物で、地下は巨大なシェルター構造になっており、今はダークの居城として使われている。
その入り口で、三人はピタリと足を止めた。
「すんなり中に入れてくれるとは思っちゃいねえが……なんだこりゃ?」
塔の入り口の前には、一振りの直刀が通せんぼでもするかのように、抜身のまま地面に突き刺さっている。長さは一メートルに少し足りないくらいだろう。柄はギザギザに節立っていて、刀身は菖蒲の葉のように滑らかな線形。儀式用の飾り物にも見えるが、剣全体から放たれるオーラがそれを否定する。魔剣――あるいは神剣と呼ばれる類のものであることに間違いなかった。
「邪魔だ!」
ダークスターがリボンを飛ばして剣を叩き切ろうとする。
「待つんだ! それを刺激しちゃいけない!」
シルが鋭い静止の声を上げたのと、すでに放たれたリボンが真っ二つに斬り落とされるのとが、ほぼ同時だった。
「なん……だと?」
驚くダークスターをよそに、シルはアリーズの肩の上で全身の毛を逆立て、見たこともないくらいに体を震わせている。
「その剣の名は天叢雲剣という。初代プリティスターが尊い犠牲と死闘の果てに打ち破った、最強最悪の悪魔にして災厄の化身。その封印そのものだ。その悪魔の名は――」
「流石に詳しいな、シムルグよ」
シルの言葉を引き継ぐように、可憐な少女の声がどこからともなく響いた。
「雫っ!」
その声に、ダークスターが反応する。それを無視して、朗々と響く声が少女らしからぬ口調で言葉を続ける。
「その悪魔の名は八岐大蛇。かつて神格を得るために人間界で猛威を振るったものの、あと一歩のところで貴様らに野望を断たれたのだったな。そしてその剣――天叢雲剣とは、神格にも迫る力を持った悪魔、八岐大蛇の核そのものよ」
その言葉が終わると同時に、剣を中心として塔全体を取り囲むような巨大な暗黒の魔法円が浮かび上がる。
「さあ、今こそ数千年の眠りから覚める時だ。我が命に従うならば、汝が望むものを授けよう。汝が最後に喰らうはずだった贄。初代プリティスターにして、神代の巫女の末裔の血を――。魔神ダークの名において命ずる。現界せよ、八岐大蛇!」
突然、剣の真上に当たる魔法円の上空から、ポタリと赤い雫が剣の柄の先に落ちた。それはやがて一筋の赤い液体の――血液の流れとなって剣に注がれる。
まるで渇いた者が水を飲み干すかのように、剣はおよそ一リットルの新鮮な血を吸い込んで、刀身から一際強いオーラを放つ。そして、ドクンと鼓動するかのように大きく震えると、見る見るうちに変化を遂げた。
アリーズ、ダークスター、オルトスが身構える。さぞかし巨大な怪物が現界するのかと思いきや、剣は人間の男の姿を取った。
「これはまさしく――かつて余が血眼になって追い求めた贄。神の器たる神代の血肉よ。しかし……神格を得るには事足りるが、人間界に留まるには事欠く量とはな。余が怖いか? ダークよ」
「我が命に従うならばと言ったはずだ。そこの三人を見事打ち倒せば、褒美として与えよう」
ほう? と言って含み笑いをする男は、身長百九十センチほどの、細身だが筋肉質な体型。足元まで伸びる黒髪に、切れ長の黒い瞳を持つ、類い稀なる美形の偉丈夫――。真っ白な着物を羽織り、右手には天叢雲剣を握っている。
「お前が八岐大蛇か?」
ダークスターが憎悪のこもった赤い瞳で、殺意をたぎらせて男を睨みつける。
「左様。余が神格――魔神・八岐大蛇である」
「ダークの使い魔の分際で神を名乗るとは……思い上がりも大概にしろッ!」
ダークスターが二本のリボンを剣に変えて、男に――八岐大蛇に斬りかかる。
神速の踏み込みからの、二刀の一閃。だが八岐大蛇は微動だにせず、飄々と自然体で立っている。
次の瞬間、二枚の布切れがはらりと地面に落ちる。それを見てダークスターは驚愕した。敵は全く動いたようには見えなかったのに、剣が二本とも手元から斬り落とされてリボンに戻ってしまったのだ。
「なっ? おのれ――ッ!」
動揺したのもわずか一瞬のこと。すぐさまダークスターは二本のリボンで猛攻撃を繰り出す。余裕の笑みすら浮かべた八岐大蛇の周りには、その都度に斬り落とされたリボンの切れ端が舞った。
「さあ、今度は余から攻めるぞ?」
まるで遊びにでも誘うかのように、八岐大蛇はズカズカとダークスターとの間合いを詰める。その足が途中で止まった。アリーズが遠当てを放ち、それを八岐大蛇が右手を開いて受け止めたのだ。
「……倒すつもりで気を込めたんだけどね」
「なるほど、そちらの娘が本命か? 今代のプリティスターと見たが、これは楽しめそうだ」
八岐大蛇は愉しそうに笑って標的を変えると、表情を一変させて殺気を漲らせた。強大な力を感じて、アリーズは緊張した顔で構えを取る。
一方、ダークスターは怒りに全身を震わせていた。
この者の現界に使われた血は、間違いなく雫の血。ダークはおそらく転移魔法で、雫の血を魔法円の上から注いだのだ。大切な人の身体を傷つけられ、それでも報復すら果たせずに、あまつさえ舐められている自分が許せない。
ダークスターはより強い魔力をリボンに注ぎ、超硬度の剣を生成する。そして二刀を手に飛び出そうとしたところで、オルトスが肩を掴んで止めた。
「やめておけ。ここでテメエらが全力で戦ったら、シメールとラドゥのやってることが無駄になる。コイツは俺に任せな」
「なっ、馬鹿なッ! 貴様ごときに奴の――神格の相手が務まるとでも思うのか?」
前に進み出たオルトスに、ダークスターが食ってかかる。無謀にもほどがあると、気でも狂ったのかと言わんばかりの口調だが、それを聞いてオルトスはニヤリと笑った。
「さあて、そいつはやってみねえとわからねえ。ただな? 強敵だからこそ、これ以上テメエらには戦わせられねえ。テメエらを無傷で先に進ませるのが俺の役割よ」
そう言ってから、オルトスが二人を怒鳴りつける。
「退け! アリーズ。ここで戦ったらダークの思う壺だろうが! そしてパンドーラ! ダチを助けるんじゃなかったのか? 目的を忘れるんじゃねえ!」
オルトスはそれだけ言うと、さっさと行けとばかりに手をヒラヒラと振った。アリーズが飛んできて、その手をギュッと掴む。
「オルトス、わたし……」
両目に涙をいっぱいに浮かべて、アリーズは葛藤する。止めたい気持ちもあった。感謝の気持ちもあった。別れの予感もあった。それでも「わたしも一緒に戦う!」って、その一言がどうしても口に出せない。オルトスの覚悟を前に、それだけは口にしてはいけない気がした。
以前のアリーズなら――眠りにつく前の未幸なら、こんな時に迷いはしなかった。シメールとラドゥを置いてきたりはしなかった。ここでオルトスを一人で戦わせたりはしなかった。一緒に一万の最上位悪魔を倒して、一緒に八岐大蛇を倒して、誰も失うことなく、みんなで一緒にって――躊躇なく、そう言いきったはずだった。
でも知ってしまった。全力で戦っても敗れることがあることを。その結果、取り返しのつかない悲劇を招くことがあることを。自分の弱さを知って、自分が抱えているものの大きさを知ってしまった。この戦いは――何があっても負けるわけにはいかないのだと!
オルトスの手を握ったまま、今にも泣き出しそうなアリーズの頭の上に、ポンとオルトスがもう片方の手を置く。
「テメエは何も間違っちゃいねえよ。だがな、本当に苦しい時くらい、助けてもらう側に回ったっていいんじゃねえのか? 俺はテメエを救うために、水鏡流の門を叩いたんだからよ」
その声の優しさと言葉の意味に驚いて、アリーズは目をまんまるにしてオルトスを見上げた。
「オルトス……。今、なんて?」
「二度と言うかよ! テメエは俺の獲物だから、コイツにはくれてやらねえってだけだ。とっとと行け!」
そう言い捨てて、オルトスは八岐大蛇と向かい合う。
「待たせたな。さあ、かかってきやがれ!」
「別れは済んだのか? 悲壮な覚悟は美しいが、それを手折るのも余の美学。せめて一太刀で死なせてやろう」
八岐大蛇が、言葉と同時に、ヒュン、と無造作に剣を振るう。横一文字に振るわれた剣は、敵を真っ二つに斬り裂いたはず――そう確信する八岐大蛇の目に、変わらずそこに立つオルトスの姿が映る。よく見ると、彼が着ているグレーの開襟シャツの胸の辺りに、微かに血が滲んでいた。少し遅れて、何か青い物がひらひらと舞って地に落ちる。それはオルトスがいつもマフラーのように首にかけている、青いネクタイの切れ端だった。
「なにっ?」
驚く八岐大蛇を後目に、オルトスが詠唱を始める。
――水面は真実の姿を映し出す。
――我は流水に鑑みるなくして、止水に鑑みる。
――我が心は澄み切った水の如し。如何なる邪念も霊智を曇らせること能わず!
“水鏡流合気柔術――奥伝! 明鏡止水!”
「はて、魔力は感じぬ。何の呪文だ?」
さっきの違和感の正体を探るため、八岐大蛇は同じ剣筋で、より深く踏み込んでオルトスを斬りつける。しかし、今度はかすり傷一つ付けることができぬまま、さらなる変化が訪れる。
“ヒュウウウ――コォオオオ――ッ”
初めて耳にする空気を震わせるような音とともに、不意に周囲の気温が下がったような気がした。実際に下がったのは気温ではない。地表から、大気から、大量の気がオルトスの体内に流れ込んでいるのだ。
“水鏡流合気柔術――奥伝! 合気呼吸が十の段!”
「今度は気の力が増したか。人の技で戦う悪魔とは面白い。悪魔だった頃の――眠りにつく前の余とならば、いい勝負ができたかもしれんな」
“秘剣――鎌鼬!”
八岐大蛇は天叢雲剣を振りかぶると、その場から勢いよく袈裟斬りに振り下ろした。オルトスの左肩から右脇腹までを断ち切るように、見えない刃が空間を切り裂いて飛ぶ。
“水鏡流合気柔術――裏伝! 無爪刃!”
オルトスは右拳を鉤爪状に開いて、左下からフック気味に打ち抜く。それは五本の刃となって、八岐大蛇の放った鎌鼬と衝突し――次の瞬間、双方の技が消滅した。
その直後、八岐大蛇とオルトスの姿が同時に消える。天叢雲剣による突きがオルトスの左耳のピアスを砕き、オルトスの拳が八岐大蛇の手のひらに受け止められる。
空中で激突した後、一旦後ろに跳んで距離を取った二人。しかし、八岐大蛇は自身が後退したことに驚いているようだった。
「どうした、神格? 鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてよ。俺を時間稼ぎの捨て駒だとでも思ったか?」
「水鏡流と言ったか? なるほど――あの忌々しい神代流の派生か……」
二人の一瞬の攻防を見て、ダークスターが驚愕の表情を浮かべる。少し前に戦った時のオルトスとは、別人としか思えないスピードとパワーだった。
「生憎だが、俺は勝ちを投げたことは一度もなくてな。起きて早々気の毒だが、今度こそ永遠の眠りにつかせてやるぜ!」
「その意気や良し。だがその程度の技では――格の違いは埋められぬ!」
八岐大蛇から強大なオーラが立ち昇った。オルトスは不敵に笑うと、入り口を指差して「行け」とアリーズたちを促す。次の瞬間、オルトスが飛び出した。八岐大蛇の注意を二人から逸らすためだろう。
わずか一息の間に、十の拳と剣が交差する。別れの言葉もかけられないまま、アリーズとダークスターは塔の中に姿を消した。
地下へと伸びる非常階段を、アリーズとダークスターが飛ぶような速さで駆け降りる。シルは振り落とされないように、必死でアリーズの肩にしがみついていた。
「悔しいな。これじゃ、結衣ちゃんを失ったこの前の戦いと同じじゃない。今度こそみんなを守るために、腕輪の願いを使ったのに……」
「戦力の分断による、各個撃破がダークの狙いなんだろう。わかっていても、今は奴の手のひらの上で踊るしかない。奴さえ倒せば、一万の悪魔も八岐大蛇も無力化できるかもしれない。そうだな? シル」
「その可能性はあるね。一万の悪魔は七十二柱と同じで、半悪魔のように人間の憑代を持たない。それは神格となった八岐大蛇も同じだ。定期的にダークの魔力や血液供給を受けなければ、現界を維持できないだろう」
アリーズが思わず零したつぶやきに、ダークスターが答えた。そしてシルの言葉を聞いて、アリーズは決意を新たにする。
うん。と一つ頷いてから、アリーズは残りの階段を一気に駆け下りながら決戦の準備に入る。
――水面は真実の姿を映し出す。
――我は流水に鑑みるなくして、止水に鑑みる。
――我が心は澄み切った水の如し。如何なる邪念も霊智を曇らせること能わず!
“水鏡流合気柔術――奥伝! 明鏡止水!”
詠唱が終わると同時に階段を降りきったアリーズは、ダークの間に通じる通路で、両手を胸の前で合わせて召喚を行った。
「守護石ガーネット・生命のブラッド――」
“プリティスター・ライフ・アシミレイション”
現れた森の女王ドリアードの姿を見て、アリーズは思わず目をパチクリさせる。ドリアードの様子が、何だかいつもと違っていた。
身体は一回り大きく、全身が光り輝いており、纏う衣装もより豪華で美しく、表情は気品に満ち溢れて、発する気も神々しかった。
「あなた……本当にドリアードなの? 幻獣というよりも、まるで……」
まるで、神様のよう――そう言いかけたアリーズの唇を、ドリアードの唇が塞ぐ。
――ドクン!
熱い塊がアリーズの体内に入り込む。ドリアードはアリーズと同化して、その身体能力を大幅に引き上げる。
いつもと同じ行程――だが行程は同じでも、その効果は比較にもならなかった。スーパー・スターアリーズへの超変身によって、その召喚技であるドリアードも飛躍的に強化されたのだろう。
「あっ、ぐっ……。ダメッ、気をしっかり持たないと……」
「どうした? おい、しっかりしろ!」
一瞬、意識が飛んでいたのかもしれない。気がつくと、ダークスターがアリーズの肩を掴み揺さぶって、険しい顔で声をかけていた。
しかし、アリーズにはダークスターの言葉が聴き取れない。シルも羽ばたきながら何か言っている気がしたが、まるで頭に入ってこない。どちらも目の前にいるはずなのに、何だかずいぶん遠くに居るみたいにその存在がおぼつかない――。
若葉未幸という器が、超変身によって無理に拡張されて、ドリアードが入り込んだことでさらに風船のように膨らんでいく。本来は精霊降ろしであるはずのアリーズの召喚技が、これではまるで神降ろしだ。同化したドリアードの聖気が強すぎて、自分の魂が消し飛ばされてしまいそうになる。
「返事をしろ! 無事なのか?」
「うん……なんとか落ち着いたみたい。大丈夫、戦えるよ!」
どうにか持ち直して、アリーズがようやくダークスターに言葉を返す。しかし、彼女の険しい表情は晴れない。アリーズは笑顔を作ったつもりだったが、あるいは引き攣っていたのかもしれない。
(変身をギリギリまで抑えていたのは正解だった。そんなに長くは戦えないかもしれない。速攻で決めないと――!)
「臆するな。一万の悪魔の軍勢に加えて神格モドキまで仕向けたのは、それだけダークが我々の力を恐れているということだ。勝機はある!」
「そうだね。行こう――雫ちゃんを救いに!」
アリーズの身体の震えを別の意味に取ったのか、ダークスターが激励の声をかける。その声に、アリーズはしっかりと頷いた。
最下層の暗い廊下の先にある扉には、前回とは違い、強固な魔法の鍵が掛けてあった。スーパー・スターアリーズとダークスターは、互いに顔を見合わせると小さく頷く。
ダークスターの赤い魔剣が一閃して、魔法の鍵が扉の溝に沿って両断される。直後にアリーズの裏当てが炸裂して、扉を木っ端みじんに打ち砕いた。
――ヒュン!
完全なる黒が、視界の一角を塗り潰す。あらゆる光を吸収するダークの魔剣が、室内に飛び込んだばかりのダークスターを襲う。彼女も十分に警戒はしていたものの、ダークの剣速が予測を上回った。回避が追いつかず、その剣がダークスターの左胸に迫る。
「させないっ!」
アリーズがダークの腕に触れたかと思うと、ダークの身体が一回転する。その一瞬の攻防で、アリーズとダーク、双方の表情が歪んだ。
「流石だな、奇跡のプリティスターよ」
「アリーズでいいよ。そっちこそ、もう身体はすっかりよくなったみたいだね」
たった今アリーズが放ったのは、水鏡流の絶技の一つの合気舞い。ダークは謎の体術――恐らくは神代雫本人が体得している神代流薙刀術の技で合気舞いを潰して、投げられる前に受け身を取ったのだ。
ダークの容姿は人間の少女――神代雫のままだった。ただしその恰好は以前の手術着姿ではなく、黒のワンピースに黒のブーツ、それに白いタイツという、少女らしい格好に変わっていた。恐らくは手術着が魔力で変化したものだろう。すっかり血色の良くなった顔には、その可憐な姿に似合わぬ残忍な笑みが浮かんでいる。
アリーズは油断なく身構える。その脇をすり抜けるようにして、ダークスターが前に出た。
「逢いたかったぞ――ダーク! 貴様を滅ぼして、私は雫を取り戻すッ!」
ダークスターの二本の剣が、眩しいほどの強い光を放つ。魔力を限界まで注いでいるのだろう。前回と比べてダークは飛躍的に強くなっているが、ダークスターもまだ本気を見せていない。
「その力も我が与えてやったというのに、この恩知らずめ」
「どの口がほざくか――ッ!」
ダークは不思議な足さばきでダークスターの攻撃を躱していく。摺り足による静かな歩行。特に速く動いているようには見えないのに、ダークスターの二刀を避け、側面にスルスルと回り込む。
「その技なら知っている。神代流薙刀術――舞台風。雫のために師である母が考案した、身体の負担の少ない特殊な歩法だ」
ダークの動きを先読みして、ダークスターの剣の結界がダークを飲み込む。あらゆる角度から絶え間なく襲い来る我流の剣術。高速の剣戟が、ダークを防戦一方に追い込んだ。
「ぐっ……おのれッ!」
剣速自体はダークが勝るものの、ダークスターの剣は二刀流だ。倍の手数でダークの剣を捌きつつ、一振りごとにダークの体勢を崩して追い込んでいく。
アリーズはその激しい戦いを見守りながらも、自身は戦いに参加せずに静かに気を練る。シルもまた、自分に介入可能な戦いではないと判断して、後方で待機する。
そう、これは事前に打ち合わせた展開だった。仮にダークスターの力がダークを上回るとしても、彼女ではダークの身体を――神代雫の身体を傷つけることができない。どんなに頑張ったところで、できるのは裏当ての気を練るための時間稼ぎと、裏当てを確実に当てるための隙を作ることだけなのだ。
(まだ……もう少し。きっとチャンスは何度もない。この一撃で決めなくちゃ!)
ただですらスーパー・スターアリーズという神に迫る力を得た上に、神格にも相当するドリアードを体内に宿しているのだ。そこに加えて大量の気を体内に蓄えるのは、自身の限界との戦いだった。それでもアリーズは歯を食いしばって、裏当ての気を練り続ける。
そして遂に均衡が崩れる。ダークスターの剣を受けそこなったダークが、持っていた魔剣を手放したのだ。ダークの手から離れた剣は、魔力の供給を断たれて黒い霧となって四散する。その隙を逃さずにダークスターが飛び込んだ。
「馬鹿めッ!」
それはダークの誘いだった。ダークスターの意識が剣を失った右手に集中している隙に、ダークは空いている左手を彼女に向ける。その手から暗黒の球体が生まれて――。
「馬鹿は貴様だ――ッ!」
だが、ダークスターはこの展開を読んでいた。剣で敵わない以上は、必ずこの技を使ってくると。ダークスターの渾身の一振りが、暗黒の球体を真っ二つに斬り裂く。
ダークスターは返す刀をすぐさまリボンに戻すと、ダークの周りを角度を変えて旋回させて、その全身を赤い鞠のような球体に閉じ込める。ダークスターの魔法はダークから授かったもの。そう、これは暗黒の球体と全く同質の魔法だった。
「今だ! アリーズ!」
「任せて!」
アリーズが水鏡流の滑り足で、ダークとの距離を一気に詰める。その目の前で赤い鞠が弾け、中から怒りの形相のダークが這い出してきた。
「遅いよッ! 雫ちゃんを返してもらう!」
“水鏡流合気柔術――裏伝! 裏当て!”
目視できるほどに凝縮された強大な気が、アリーズの右拳に宿る。それは驚愕の表情を浮かべるダークの腹部にトン、と当てられて、一瞬後に爆発した。
「があああああああああああああぁぁぁ――ッ!」
可憐な少女の唇から、獣の咆哮のような悲鳴が迸った。ダークは悶え苦しんで地面の上を転げ回る。その声は次第に小さく細くなり、やがてその身体も地に伏せたまま動かなくなった。
「やったのか?」
「わからない……。確かに核は捉えたけど、砕けた感覚が無かったの」
「ならば、砕けるまで何度でも打つだけだ!」
「待って! 迂闊に近づいたら――」
ようやく雫を救える。やっと本物の雫と再会できる。その焦りが、ダークスターの心に油断を生んだのだろう。アリーズの制止と、ダークスターが倒れたダークに駆け寄るのとがほぼ同時だった。そして次の瞬間、ダークスターの頭頂に、暗黒の刀身がずぶりとめり込んだ。
「あがっ……」
「学習しない無能め。そんなことだから踏みにじられるのだ。運命からも――我からもな!」
ムクリと起き上がったダークは、ダークスターの頭にめり込んだ暗黒の剣を、そのまま真下に振り下ろした。ダークスターの身体から大量の暗黒の粒子が放たれ、その身体がドサリと崩れ落ちる。次の瞬間には、ダークスターの変身が解けてパンドーラの姿に戻った。
「そんな……パンドーラッ!」
「馬鹿な……パンドーラッ!」
アリーズとシルの悲鳴が重なり合う。
唐竹割りにされたとはいえ、ダークスターはプリティスターと同質の存在だ。肉体的なダメージは腕輪が請け負ってくれるために、本当に真っ二つに断たれたわけではない。しかし、変身が解けたのは深刻な事態と言えた。それは、腕輪が回復を諦めたということ。最悪の場合、ショック死していることもあり得る。
アリーズが駆け寄るよりも、シルが飛来するよりも速く、ダークが倒れたパンドーラの右手の腕輪に触れた。
「返してもらうぞ」
パンドーラの右手首に嵌められていた腕輪が、瞬時にダークの右手首に移る。
「それは……“サークル・オブ・ダークネス”」
足を止めたアリーズが、ポツリとつぶやく。
「そんな名前を付けたのか。だが、その本質を知っているか? これは我の核そのもの。神格の力の半分を物質化したものだ。お前が身に着けている腕輪も同じだ。シムルグの核を二つに割ったものなのだからな」
「“煌めく星々の円環”が……神格としてのシルの核?」
とっさにアリーズはシルの方を見る。シルは沈黙することでそれに答えた。
“核”とは、悪魔や妖精といった魔界や天界の住人が必ず持つ命そのものだ。シルは人間を愛し、人間を守るために、自分の命を二つに割って、その両方を人間に預けることで、神である格を失って妖精になったのだ。そして核を持たない例外だからこそ――妖精シルは転生を繰り返す不滅の存在でもあった。
「つまり、我はこれまでは半分の力で戦っていたということだ。いや――半分どころではないがな。お前も聞いたことがあろう? 腕輪は二つ揃ってこそ真の力を発揮するとな!」
そう言いながら、ダークは腕輪を着けた右腕を見せつけるように顔の前に掲げ、その隣に左腕も並べた。その左手首に、右手首にあるものと同じ闇の腕輪が出現する。たった今、残り半分の核も腕輪に変えたのだろう。
ダークがニヤリと笑って両腕を一振りすると、二つの腕輪は漆黒の粒子に変化して、ダークの体内に取り込まれた。それと同時に、ダークの身体が――雫の姿が急激に変化し始める。
長い髪は毛先に行くに従って灰色から黒へと色を変え、その額を金色のカチューシャが飾る。
服装もまた変化していた。藍色のドレスと長手袋を身に纏い、肩章やドレスの裾には金色の房飾りがあしらわれている。胸にはイービルリングと同じ形の漆黒の宝石。両耳と宝石の下には、やはり漆黒の涙のような形のアクセサリー。そして何より特徴的なのは、全身を囲むように円形に伸びる、帯のように太い赤いリボン――。
明らかに異質でありながら、見る者を惹きつけて止まない美の化身が、この薄暗い地下室に降り立った。
特に身体が大きくなったわけではない。しかし、誰が見ても一目でわかるだろう。そこに在るのは、人間よりも遥かに高位の存在であることを。
新たなる姿と力を得た新生ダークは、フワリと宙に浮き上がる。
気高く、美しく、威厳に満ちて、禍々しい――それは、まさしく神と呼ぶに相応しい姿だった。